2013 年 17 巻 1 号 p. 13-24
【目的】軟口蓋挙上装置(PLP; Palatal Lift Prosthesis)の適応基準を明確にし,本装置の摂食・嚥下障害に対する有効性について検討した.
【方法】摂食機能訓練のみ実施した群(コントロール群:49 例)と摂食機能訓練に加えてPLP を装着した群(介入群:57 例)とで比較した.介入群はPLP 作製後に初回評価を行い,摂食機能訓練とPLP の装着を開始した.初回評価から3 カ月未満,3 カ月以上6 カ月未満,6 カ月以上12 カ月未満,12 カ月以上の4つの期間のいずれかにおいて評価を行った.コントロール群は,初回評価を行い摂食機能訓練のみ開始し,同様に4 つの期間のいずれかにおいて評価した.比較診査は,発話と摂食機能関連の診査,および栄養摂取状況,聞き取りによる主観的健康感である.
【結果・考察】原疾患は脳血管疾患以外に20 疾患以上あり,適応疾患を特定することは困難であると思われた.一方,舌挙上状態不良,軟口蓋挙上状態不良,開鼻声,呼気鼻漏出による子音の歪み,および摂食・嚥下の5 期のうち,口腔期と咽頭期障害が対象患者の80% 以上を,また軟口蓋の感覚低下は70% 近くを占めていたことから,PLP の適応を判断するには,疾患よりも病態のほうが把握しやすいと思われた.
PLP の装着により挙上状態を最も表出している「鼻咽腔閉鎖」と「鼻咽腔逆流」が改善していた.また咀嚼状態は,初回評価と再評価時に明確な差が認められなかった.PLP 装着の効果として,咀嚼機能への影響はないものの,嚥下機能の改善に貢献することが認められた.
初回評価から再評価までの期間別効果については,6 カ月以上の中期・長期的な期間をおけば,PLP は摂食機能改善のための訓練用装置としての期待がもてた.
【結論】1.PLP の適応を判断するには,疾患よりも病態のほうが把握しやすいと思われた.
2.PLP は発話障害に対する補助具であると同時に,6 カ月以上の中期・長期的な期間をおけば,摂食・嚥下機能改善のための訓練用装置としての期待がもてた.