日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
17 巻, 1 号
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • ―経口摂取の予測式―
    池嵜 寛人, 原 修一, 清永 紗知, 黒木 はるか, 立野 伸一
    2013 年17 巻1 号 p. 3-12
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2020/04/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】急性期での入院日数が短縮される傾向にある近年,脳血管障害急性期の治療終了時における嚥下障害の予後予測はほとんど検討されていない.そこで,脳血管障害による嚥下障害を対象に,急性期の退院時に経口摂取可能となった要因を調査・分析し,急性期嚥下障害の予後予測の可能性を検討した.

    【対象】2009 年3 月から2010 年3 月の1 年間に急性期病院である当院に入院となり,嚥下障害と診断され,言語聴覚士の機能評価を実施した脳血管障害例を抽出した.このうち,嚥下機能に影響を及ぼしうる他の変性疾患や外傷等を併発していない脳梗塞または脳出血例214 名を,本研究の対象とした.

    【方法】1)調査方法: カルテから検討項目を選択し,後方視的に調査を行った.2)検討項目: 診療記録・画像所見から9 項目,臨床所見から11 項目を挙げた.3)解析方法: 退院時の栄養摂取方法から2 群に分類した.退院時に経管栄養などの補助栄養法がまったく不要で経口摂取が可能であった者を経口摂取群,部分的にでも経管栄養を用いていた者を経管栄養継続群とした.栄養摂取方法を目的変数,検討項目を説明変数として,最尤推定法に基づきロジスティックモデルへの当てはめを行った.なお,モデルに加える説明変数の選択方法は,変数削除の基準p 値をp>0.1(尤度比検定)として,ステップワイズ変数減少法を用いた.また,回帰モデルの妥当性については,自由度調整R2,Lack of Fit,Receiver Operating Characteristic Curve により,回帰診断を行った.

    【結果】右半球のみの病変,Barthel Index>0,嚥下音良好,フードテスト4 点以上からなる予測式を,本研究では考案した.経口摂取可能となる予測式の感度,特異度は89.7%,78.5% であり,有効度は84.1%であった.

    【結論】本研究で考案した予測式は,急性期病院で対象となるすべての脳血管障害患者における急性期病院退院時の経口摂取の可否を予測するうえで,有用な予測式である.

  • 植田 耕一郎, 向井 美惠, 森田 学, 菊谷 武, 渡邊 裕, 戸原 玄, 阿部 仁子, 中山 渕利, 三瓶 龍一, 島野 嵩也, 岡田 ...
    2013 年17 巻1 号 p. 13-24
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2020/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】軟口蓋挙上装置(PLP; Palatal Lift Prosthesis)の適応基準を明確にし,本装置の摂食・嚥下障害に対する有効性について検討した.

    【方法】摂食機能訓練のみ実施した群(コントロール群:49 例)と摂食機能訓練に加えてPLP を装着した群(介入群:57 例)とで比較した.介入群はPLP 作製後に初回評価を行い,摂食機能訓練とPLP の装着を開始した.初回評価から3 カ月未満,3 カ月以上6 カ月未満,6 カ月以上12 カ月未満,12 カ月以上の4つの期間のいずれかにおいて評価を行った.コントロール群は,初回評価を行い摂食機能訓練のみ開始し,同様に4 つの期間のいずれかにおいて評価した.比較診査は,発話と摂食機能関連の診査,および栄養摂取状況,聞き取りによる主観的健康感である.

    【結果・考察】原疾患は脳血管疾患以外に20 疾患以上あり,適応疾患を特定することは困難であると思われた.一方,舌挙上状態不良,軟口蓋挙上状態不良,開鼻声,呼気鼻漏出による子音の歪み,および摂食・嚥下の5 期のうち,口腔期と咽頭期障害が対象患者の80% 以上を,また軟口蓋の感覚低下は70% 近くを占めていたことから,PLP の適応を判断するには,疾患よりも病態のほうが把握しやすいと思われた.

    PLP の装着により挙上状態を最も表出している「鼻咽腔閉鎖」と「鼻咽腔逆流」が改善していた.また咀嚼状態は,初回評価と再評価時に明確な差が認められなかった.PLP 装着の効果として,咀嚼機能への影響はないものの,嚥下機能の改善に貢献することが認められた.

    初回評価から再評価までの期間別効果については,6 カ月以上の中期・長期的な期間をおけば,PLP は摂食機能改善のための訓練用装置としての期待がもてた.

    【結論】1.PLP の適応を判断するには,疾患よりも病態のほうが把握しやすいと思われた.

    2.PLP は発話障害に対する補助具であると同時に,6 カ月以上の中期・長期的な期間をおけば,摂食・嚥下機能改善のための訓練用装置としての期待がもてた.

  • ―嚥下アプローチへの新たな提言―
    小島 千枝子, 大野 友久, 長谷川 賢一, 藤田 大輔
    2013 年17 巻1 号 p. 25-35
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2020/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】半固形物は一般に,舌を口蓋に押し付けることによる押しつぶしで処理される.しかし,健常者において,固形物のように咀嚼して食べる人が存在する.本研究では,口蓋の高さが半固形物の咀嚼パターンに影響している可能性を検討した.

    【対象】健常若年成人女性50 名.

    【方法】① 上顎の歯型模型を作製し,咬合平面から口蓋の底部までの高さを5 mm 間隔で計測した.② 最大舌圧を3 回測定し,平均値を分析の対象とした.③ ゼリー5 g 程度の自由嚥下を観察と問診で,咀嚼と押しつぶしパターンに分類した.④ 咀嚼パターンの9 名に対し,ソフトワックスによる模擬PAP(Palatal Augumentation Prosthesis)を口蓋の最も高い部分に貼り付け,摂食パターンの変化を観察し,舌圧を測定した.⑤ 3 名に対しVF を行い,模擬PAP 有無での嚥下動態を比較した.

    【結果と考察】統計分析により,押しつぶしと咀嚼に分ける口蓋の高さのカットオフ値が20 mm と算出された.口蓋の高い人は咀嚼が有意に多く,舌圧は有意に低かった.口蓋の高い9 名に模擬PAPを装着すると,咀嚼パターンから押しつぶしパターンに変わり,舌圧は平均5 kPa 上昇した.嚥下開始時の食塊の先端の位置は,咀嚼パターンでは喉頭蓋谷以降が83% を占めたが,押しつぶしパターンに変わると,口腔・咽頭上部領域が100% になり,喉頭蓋谷持続時間も短縮した.口蓋の高い人が半固形物を咀嚼する理由については,食塊を破砕しやすいことに加え,送り込みに関しても,半ば自動的に咽頭へ送り込まれる Stage Ⅱ Transport を用いたほうが容易であることによると推測された.嚥下障害者においても,口蓋の高い人はもともと半固形物を咀嚼していた可能性がある.スクリーニング段階で,口蓋の高さと咀嚼パターンを観察項目に加えることを提案したい.口蓋の高い人には,PAP 装着を選択することが有効と考えられた.

  • 上田 菜美, 野原 幹司, 小谷 泰子, 阪井 丘芳
    2013 年17 巻1 号 p. 36-44
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2020/04/30
    ジャーナル フリー

    【緒言】舌骨は嚥下において重要な因子のひとつであり,舌骨の移動距離が小さいと誤嚥のリスクが高いという報告がある.また,舌骨の挙上運動は短時間で行われるため,舌骨の運動速度の遅延が誤嚥に影響する可能性が指摘されている.本研究では,嚥下造影検査(以下VF)を用いて,健常成人において,一回嚥下量の変化が嚥下時の舌骨の移動距離と運動速度に与える影響について検討した.

    【方法】健常成人21 名を対象とした.一回嚥下量は2.5,5,10,20 ml とし,VF は側方より30 フレーム/秒で撮影した.VF 画像はAVI に変換してPC に取り込み,二次元運動解析ソフトを用いて解析した.解析時の基準平面は耳珠(原点)と鼻翼を結ぶカンペル平面をX軸,X軸に垂直な直線をY軸とした.舌骨の測定点は舌骨の前下方点とした.安静時の舌骨の位置を基準とし,移動距離の最大値Max d,2 方向に分解したMax ud(上方),Max fd(前方)を測定した.また,挙上前進運動時の舌骨の運動速度の最大値Max v およびMax uv(上方),Max fv(前方)を測定した.

    【結果】二元配置分散分析を行った結果,一回嚥下量とMax d,Max ud,Max fd については有意差を認めなかったが,一回嚥下量とMax v,Max uv,Max fv については有意差を認めた(p<0.01).多重比較検定(Tukey 法)を行った結果,Max v は,2.5,5.0,10 ml と20 ml および2.5 ml と10 ml の間で有意差を認めた(p<0.05).また,Max fv,Max uv については,ともに2.5,5.0,10 ml と20 ml の間で有意差を認めた(p<0.05).

    【結論】嚥下時には舌骨の運動速度を調節することで,大きな嚥下量でも誤嚥せず嚥下している可能性が示唆された.今後,高齢者と比較・検討を行うことが必要と考えられた.

  • 道脇 幸博, 愛甲 勝哉, 井上 美喜子, 西田 佳史, 角 保徳
    2013 年17 巻1 号 p. 45-51
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2020/04/30
    ジャーナル フリー

    食品による窒息事故のために三次救急病院に搬送された107 例を,死亡例62 例(57.9%)と生存例45 例(42.1%)に分けて,生命予後の観点から両群を比較した.その結果,年齢,性別,併存症の数,事故発生前の運動障害の有無,喫煙・飲酒の習慣,食事内容,食事形態,食事の自立度などの背景因子については,両群に差はなかった.そのため,現場で事故発生に気づく観察力と,現場での救急処置が重要と思われた.そして,食品による窒息事故の低減には,現場での観察力の強化や救急対応の啓発・普及活動のほかに,症例の集積とデータベース化が必要であると考えられた.

  • 斎藤 徹, 小池 早苗, 小澤 照史, 臼井 洋介
    2013 年17 巻1 号 p. 52-59
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2020/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】統合失調症の嚥下障害者における誤嚥性肺炎の発症と関連する因子を解析することを目的とした.

    【対象】2008 年4 月から2012 年3 月の間に,当院歯科口腔外科を受診した統合失調症の嚥下障害者232 例を対象とし,誤嚥性肺炎発症の要因を後方視的に検討した.男性:126 例,女性:106 例であり,平均年齢は70.1 歳(標準偏差:11.8 歳)であった.歯科口腔外科初診時に投与されていた種々の抗精神病薬の投与量を,chlorpromazine(CP)の力価に換算したCP 換算量の平均は458 mg/ 日(標準偏差:633 mg)であった.日常生活自立度(ADL)の評価は,「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」に準じた.

    【結果】歯科口腔外科初診時より過去3 カ月以内に誤嚥性肺炎を発症した症例は80 例(34.5%)であり,他の152症例(65.5%)は同期間に誤嚥性肺炎の発症はなかった.誤嚥性肺炎の発症症例では,非発症症例と比較してFunctional Oral Intake Scale(FOIS)(p=1.6×10-12),血清albumin(ALB)(p=9.0×10-6)およびADL(p=5.7×10-7)が有意に低下していたが,年齢(p=0.111)および肥満係数(BMI)(p=0.509)に有意差は認められなかった.また,誤嚥性肺炎の発症および非発症症例の間で,男女の比率(p=0.069)および口腔顔面dyskinesia の発症率(p=0.679)に有意差は認められなかった.CP 換算量は,誤嚥性肺炎の発症症例では非発症症例と比較して有意(p=0.001)に低かった.

    【結論】統合失調症の嚥下障害者では,嚥下機能の低下のみならずADL や栄養状態の低下が誤嚥性肺炎の発症と密接に関連していた.

短報
  • 平田 歩, 小野川 雅英, 吉岡 三郎, 岩村 健司, 中平 真矢, 高橋 朝妃, 土居 奈央, 西窪 加緒里, 石田 健司, 兵頭 政光, ...
    2013 年17 巻1 号 p. 60-67
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2020/04/30
    ジャーナル フリー

    高齢者では,基礎疾患の治療に対し,多種の薬剤を継続して投与しているケースが多く,それらの薬剤が嚥下機能に影響を及ぼしている場合がある.嚥下機能の保持や誤嚥性肺炎などの疾病を予防するためには,嚥下機能への影響を考慮した薬剤選択を支援することが必要である.今回,嚥下機能に影響を及ぼす薬剤の投与状況と嚥下機能改善度に対する投与薬剤の影響を,高知大学医学部附属病院において,嚥下リハビリテーション(以下,嚥下リハ)を施行した脳卒中急性期患者を対象としてレトロスペクティブに調査した.対象患者55 人中,37 人(67.3%)の患者に嚥下機能に影響を及ぼす薬剤が投与されていた.その内訳は,嚥下機能を改善させる薬剤14 人(25.5%),嚥下機能を低下させる薬剤16 人(29.1%),両薬剤併用7人(12.7%)であった.降圧薬が投与されていた患者において,誤嚥性肺炎のリスクを低減させるアンジオテンシン変換酵素阻害薬と,その作用のないアンジオテンシン受容体拮抗薬の使用患者の割合は後者が4.6 倍高値であったことなど,嚥下機能に対する影響を考慮した薬剤選択が必要な症例も認められた.また,意識レベルの低下した症例が多く認められ,抗精神病薬・抗コリン薬の使用に際しては,その選択や投与量を考慮する必要があると考えられた.

    一方,嚥下機能に及ぼす投与薬剤の影響について検討を行ったところ,嚥下機能を改善させる薬剤を投与している群は,他の群に比べ嚥下リハ開始時の嚥下機能が高い傾向が認められた.また,嚥下機能を低下させる薬剤を投与している群は,他の群に比べ嚥下リハ終了時の嚥下機能が低い傾向が認められた.また,嚥下機能を低下させる薬剤を服用している群における誤嚥性肺炎の発症率は,他の群に比べ高い傾向が認められた.

    以上のことから,今後,嚥下障害患者個々の病態に応じた薬剤の選択や使用方法に薬剤師が積極的に関与し,患者QOL の向上を目指す必要があると考える.

症例報告
  • 北川 栄二, 牧野 修治郎, 金藤 公人
    2013 年17 巻1 号 p. 68-75
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2020/04/30
    ジャーナル フリー

    【緒言】クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob Disease,以下CJD と略す)は,脳に異常なプリオン蛋白が蓄積し脳神経細胞の機能が障害され,脳に海綿状の変化が出現するプリオン病のひとつである.今回,孤発性CJD 患者が永眠に至るまでの間,口腔ケアを経験したので,その概要を報告する.

    【症例】50 代,男性.2009 年夏頃より運動障害と認知障害を認めるようになり,仕事に支障をきたすようになった.2010 年1 月に精査目的で当院脳神経内科に入院した.プリオン蛋白遺伝子解析の結果,孤発性CJD の確定診断が得られた.入院後,急速に失調症状が増悪し,意思疎通困難,寝たきり状態となった.また,経口摂取困難となり,経鼻経管栄養を開始した.

    【経過】歯科口腔外科には,2010 年2 月に口腔ケアの依頼があった.開口障害,口唇の出血,口臭,口腔乾燥,多量の喀痰,上皮の付着などの問題点を認めた.開口障害のため,口腔ケアは難渋したが,通法に従って,バイトブロック,スポンジブラシ,ワンタフトブラシ,保湿剤などを駆使して行った.その結果,口唇の出血は治癒し,口臭や口腔乾燥の改善を認めた.また,一時的ではあるが発熱日数の減少を認めた.口腔ケアに際しては,ディスポーザブルの帽子,フェイスガード,手袋,予防着を着用し,終了後は廃棄焼却処分とした.

    【考察】CJD 患者は,永眠に至るまでの間に,運動失調,嚥下不能になる時期が来る.また,開口障害や肺炎の発症は避けられない病態と考えられる.したがって,口腔ケアは必須であり,またケアを行うことで,口腔内の状態を改善し,肺炎発症予防にある程度貢献するものと思われた.プリオン蛋白は,通常の消毒・滅菌法では感染性を失わないことから,CJD 患者の口腔ケアの際に受傷しないこと,飛沫汚染しないことが必要である.また,可能な限り,ディスポーザブル製品で対応し,使用後は物品を廃棄処分することが望ましい.

  • 松岡 真由, 新川 泰子, 西村 直子, 尾崎 隆男, 足立 勇, 平尾 重樹
    2013 年17 巻1 号 p. 76-83
    発行日: 2013/04/30
    公開日: 2020/04/30
    ジャーナル フリー

    【緒言】先天性後鼻孔閉鎖症(Congenital Choanal Atresia, 以下CCA)は稀な先天性疾患であり,両側性の頻度はさらに少ない.本症例に対して,出生直後から発生する哺乳障害に焦点を当てた哺乳訓練・嚥下訓練経過の詳細な報告は皆無である.今回著者らが経験した本症例について,新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit, 以下NICU)入院中より約1 年間の,哺乳訓練開始から食事摂取に至るまでの経過を報告する.

    【症例】生後3 カ月の女児で,両側完全型CCA(骨性閉鎖),左狭小眼裂,左無眼球,左側不完全口唇裂があった.生後3 カ月までは不定期的に,SpO2 が30~80% 台に落ち込むことがあった.頭部CT 所見では,前頭蓋骨の骨欠損があり,頭蓋内と鼻腔内容が交通していた.

    【経過】生後3 カ月時には,哺乳時に一時的に無呼吸状態となるための窒息の危険性,吸綴・嚥下・呼吸の協調性にムラがありSpO2 の低下,生後本格的な経口哺乳未実施による経験不足と誤嚥の危険性があった.口呼吸が確立されてからは順調に進み,生後6 カ月で哺乳瓶からのミルク摂取,生後7 カ月からは1 日1 回の離乳食摂取が可能になった.1 歳1 カ月には,1 日3 回の正常発達児と同様の食事摂取が可能となった.

    【考察】出生後数週の間,新生児は鼻呼吸で生活し口呼吸を習得するのに数週間を要するため,この時期に鼻呼吸ができないと致命的である.よって,本症例のように,出生時より呼吸困難やチアノーゼが出現して生命の危険がある場合,吸綴・嚥下・呼吸の協調性,窒息の危険性,SpO2低下を評価しながら哺乳・嚥下訓練を進めることが重要であった.また,NICU 入院中から介入が必要な哺乳・嚥下障害の場合,注意すべき徴候や評価項目が多岐にわたることから,多職種間連携を進めながらチームで行う必要性が示唆された.

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