日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
Stage II transport による食塊到達時の喉頭蓋知覚の検討
山田 康平近藤 和泉尾崎 健一吉岡 文杉山 慎太郎尾澤 昌悟田中 貴信
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2013 年 17 巻 3 号 p. 217-225

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抄録

【目的】摂食嚥下障害に関連して,咽喉頭感覚と誤嚥性肺炎との関係についての報告がいくつかみられる.しかし,われわれは日々の食事で,Stage II transport の存在を認識することはまずない.そこで今回,Stage II transport による食塊到達時の喉頭蓋知覚を,実際の食品を使用して評価検討を行った.また,摂取食品のテクスチャーの違いが食塊到達時の喉頭蓋知覚に及ぼす影響についても,比較検討を行った.

【方法】酵素均質浸透法を使用してテクスチャーを3 段階に調整した食品を,健常成人20 名に咀嚼させた.官能評価法を用いて,被験者がStage II transport により,食塊が喉頭蓋に到達したと感じた時点での合図を指示した.同時に,VE を使用して,咽頭における実際の食塊位置を観察し,官能評価より得られた結果と比較検討を行った.

【結果】「咀嚼開始から合図までの時間」「咀嚼開始から食塊先端の喉頭蓋到達までの時間」はいずれも,食品テクスチャーの違いによって統計学的有意差を認めた.「咀嚼開始から合図までの時間と咀嚼開始から食塊先端の喉頭蓋到達までの時間との差」は,さまざまな値を示し,各テクスチャー間で有意な差は認められなかった.合図時の食塊先端位置は,奥舌(舌根部のうち咽頭に接する表層部位)から喉頭蓋にかけての領域で知覚している者が大半を占めた.

【考察】Stage II transport により移送された食塊を,喉頭蓋で正確に感じ取ることは,健常成人であっても容易ではないことが明らかとなった.さらに,喉頭蓋での食塊の知覚は,摂取食品のテクスチャーに影響されないことも明らかとなった.このことから,摂取食品のテクスチャーに応じて咀嚼時間を変化させることにより,嚥下前の食塊は,類似したテクスチャーに調整されている可能性があると推測できる.

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© 2013 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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