日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
要介護高齢者の口腔ケアを支援する簡易版アセスメントシートの開発
中野 雅徳尾崎 和美白山 靖彦松山 美和那賀川 明美中江 弘美伊賀 弘起大熊 るり藤島 一郎
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2014 年 18 巻 1 号 p. 3-12

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抄録

【目的】介護者向けの口腔ケア支援簡易版アセスメントシートを開発し,その信頼性と妥当性を検証した.

【対象と方法】アセスメントシートは,口腔衛生,口腔機能および口腔ケアに対するリスクを評価する10項目と,聖隷式嚥下質問紙から選択した摂食・嚥下障害スクリーニングのための10 項目からなる.聖隷式嚥下質問紙開発時のオリジナルデータを用いて,スクリーニングの感度,特異度およびCronbach のa係数を算出するとともに評価基準について検討した.某県内の特別養護老人ホーム3 施設の介護職34 名(平均介護経験6.0 年)が,アセスメントシートを用いて143 名の入所者(平均年齢86.6 歳)に対して行った評価結果を解析し,信頼性およびスクリーニングの評価基準の妥当性について検証した.

【結果および考察】悪い状態を示すAの回答が1つでもあれば摂食・嚥下障害ありとするスクリーニング条件では,感度86.0%,特異度88.9% であった.これに合計スコアに対するカットオフ値4 点の条件を加えると,さらに感度は向上した.また,介護職と入所者の条件に差がない3 施設間で行った実際のアセスメント結果において,口腔衛生,口腔機能および摂食・嚥下の各スコアに施設間で差は認められなかった.

摂食・嚥下障害のスクリーニングツールとしての本アセスメントシートの信頼度は,聖隷式嚥下質問紙同様に高かった.各スコアの評価結果に3 施設間で差がみられなかったのは,写真や解説などの評価基準を併記した結果,歯科専門職ではない介護職においても安定した評価を導き出せたことによるものと思われる.「A の回答が1 つでもある」または「カットオフ値4 点」のいずれかを満たすという判定基準を適用した摂食・嚥下障害の有病率は,内外の高齢者施設の有病率の報告と近似していた.以上の結果より,今回開発した口腔ケア支援簡易版アセスメントシートの有用性は高いと思われる.

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© 2014 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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