【目的】嚥下障害症例の臨床で,とろみ調整食品は広く用いられているが,とろみレベルの定義と物理的特性については標準化されていない.本研究は,官能評価によって3 段階のレベルのとろみを設定し,とろみの官能評価値と粘度およびLST 値を比較検討するために行った.
【方法】市販の6 種のとろみ調整食品(デンプン系1 種,グアーガム系1 種,キサンタンガム系4 種),各4 段階の濃度で作製した24のとろみ液試料を,摂食嚥下障害の臨床に5年以上たずさわる医療関係者42名が,5 段階(1:薄いとろみよりも薄い,2:薄いとろみ,3:中間のとろみ,4:濃いとろみ,5:濃いとろみより濃い)に評価した.各試料の粘度を,E 型粘度計を用いてずり速度50 s-1 で計測し,Line Spread Test によりLST 値を測定した.
Pearson の相関係数(r)および回帰直線の決定係数(R2)を算出し,官能評価の総合評価の平均値と粘度,LST 値間に相関を検討した.さらに,キサンタンガム系による3 段階(薄いとろみ,中間のとろみ,濃いとろみ)のとろみ液を選出し,おのおのに相当する粘度とLST 値の範囲を検討した.
【結果と考察】官能評価の平均値と粘度間に強い正の相関(r=0.769,R2=0.9183)を,官能評価の平均値とLST 値間に強い負の相関(r=-0.942,R2=0.8812)を,粘度とLST 値間では負の相関(r=-0.630,R2=0.7264)を認めた.
粘度とLST 値の範囲は,「標準的な薄いとろみ」:55~100 mPa・s,43~40 mm,「標準的な中間のとろみ」:150~260 mPa・s,38~34 mm,「標準的な濃いとろみ」:400~450 mPa・s,32 ~30 mm とした.官能評価値と粘度,LST 値の間に強い相関がみられたことから,ずり速度50 s-1 の条件でのE 型粘度計の粘度測定およびLST 値は,とろみ液の物性の評価として有効であると考えられた.
抄録全体を表示