2014 年 18 巻 2 号 p. 113-122
【目的】嚥下造影検査で炊飯米の検査をする場合,当科では通常炊飯した米に粉末状の硫酸バリウム製剤をふりかけ,混ぜ合わせて米粒周囲に造影剤を塗りつけたもので検査を行っている.この方法では,食感,味が本来のごはんとは大きく異なり,炊飯米について正確な検査を行うのは困難であった.今回われわれは,普段食べている状態に近い炊飯米での嚥下造影検査を可能にするために,造影剤入り炊飯米の作製を試みたので,その概要について報告する.
【材料と方法】下記 ①,② の材料を用いて,2 種類の造影剤入り炊飯米を作製した.さらに,現在,検査に用いている硫酸バリウムを使用した炊飯米と同様の試料 ③ を作製し,造影剤の入っていない炊飯米として試料 ④ を作製した.
試料 ①:無洗米10 g +ビジパーク270®10 ml +水10 ml
試料 ②:無洗米20 g +ビジパーク270®10 ml +水20 ml
試料 ③:市販のレトルトパック炊飯米12 g +硫酸バリウム粉末8 g +水2 ml
試料 ④:無洗米10 g +水20 ml
上記の方法で作製した試料について,炊飯米の造影性,造影剤の炊飯米内部への浸透性,炊飯米の物性の評価,測定を行った.また,物性との関連を調べるために,造影剤単体での濃度別の粘度の測定も行った.
【結果】蛍光分析によるヨードの分析では,試料 ①,② とも炊飯米内部までヨードが比較的均一に分布していることが確認できた.造影性に関しては,試料 ① は良好であったが,試料 ② はやや不良であった.物性については,付着性がコントロールと比較して,試料 ①,② とも高い値を示しており,特に,試料 ① は有意に上昇していた.造影剤は,粘度をもっており,これが付着性の上昇の原因の一つと考えられた.
【結論】本研究で用いた方法によって,造影剤を炊飯米の中に浸透させることができることがわかり,ファントム(人体模型)を使用したX 線透視実験でも良好な造影性を得ることができた.また,物性に関しても,付着性はやや高くなったが,比較的通常の炊飯米に近いものを作製できた.