日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
舌骨上筋群の嚥下時筋活動持続時間の加齢に伴う変化と嚥下機能との関連
岩﨑 円冨田 和秀武島 玲子飯塚 眞喜人
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2014 年 18 巻 2 号 p. 123-130

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抄録

【目的】嚥下時の舌骨上筋群の筋活動持続時間は加齢に伴い延長する.しかし,この延長が嚥下機能低下を反映しているのかどうかは不明である.本研究では,この点を明らかにするため,聖隷式嚥下質問紙のうち咽頭・口腔機能を反映する項目に対する回答により,被験者を3 群あるいは2 群に分け,活動持続時間との関連を調べた.

【方法】23~86 歳の健常者83 名(男36 名,女47 名)を対象とした.嚥下課題には,水3 および10 ml の一回嚥下を用いた.そして,舌骨上筋群より表面筋電図を記録し,嚥下時の活動持続時間(半値幅)を計測した.

【結果】水3 および10 ml 一回嚥下時の半値幅は,それぞれ0.62±0.22 秒(平均±標準偏差,n=78)および0.57±0.24 秒(n=80)であった.そして,半値幅と年齢との間に弱い相関が認められた(水3 ml: r=0.330, p=0.003, n=78;水10 ml: r=0.238, p=0.034, n=80).咽頭・口腔機能を反映する9 項目について,A 回答あり群,A 回答なしB 回答あり群,C 回答のみ群に分けた時,水3 ml 一回嚥下時の半値幅はそれぞれ,0.83±0.30 秒(n=6),0.61±0.19 秒(n=23),0.60±0.21 秒(n=49)であった.同様に10 ml一回嚥下時では,0.75±0.34 秒(n=7),0.57±0.20 秒(n=24),0.55±0.23 秒(n=49)であった.年齢を共変量とした分散分析では,群間に有意差を認めなかった(水3 ml: p=0.232;水10 ml: p=0.378).咽頭機能を反映する5 項目について,B 回答あり群,C 回答のみ群に分けた時も,群間で有意差を認めなかった(水3 ml: p=0.419;水10 ml: p=0.113).

【結論】嚥下時の舌骨上筋群の筋活動持続時間(半値幅)は加齢とともに延長するが,その延長は嚥下機能低下を意味しないと考えられる.

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© 2014 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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