2014 年 18 巻 3 号 p. 229-238
【はじめに】第1 報で対象となった脳梗塞および脳出血患者のうち,追跡調査が可能であった者を対象として,地域完結型脳卒中診療態勢下における脳卒中への治療およびリハビリテーションの終了時に経口摂取可能となる要因を調査・分析し,経口摂取の予測式の確立を検討した.
【対象】2009 年3 月から2010 年3 月の1 年間にA 急性期病院に入院となり,嚥下障害と診断され,言語聴覚士の機能評価を実施した脳卒中例を抽出した.このうち,嚥下機能に影響を及ぼしうる他の変性疾患や外傷等を併発していない脳梗塞または脳出血例で追跡調査が可能であった127 名を本研究の対象とした.対象が脳卒中への治療およびリハビリテーション終了までに要した日数は平均132.1±70.9 日であり,経口摂取群85 名,経管栄養継続群42 名であった.
【方法】1)調査方法: カルテや情報提供書から検討項目を選択し,後方視的に調査を行った.2)検討項目: 診療記録・画像所見から9 項目,臨床所見から11 項目をあげた.3)解析方法: 最終的な転帰時の栄養摂取方法から,2 群に分類した.最終的な転帰時に経管栄養などの補助栄養法がまったく不要で経口摂取が可能であった者を経口摂取群,部分的にでも経管栄養を用いていた者を経管栄養継続群とした.栄養摂取方法を目的変数,検討項目を説明変数として,最尤推定法に基づきロジスティックモデルへの当てはめを行った.なお,モデルに加える説明変数の選択方法は,変数削除の基準p 値をp>0.1(尤度比検定)として,ステップワイズ変数減少法を用いた.
【結果】右半球のみの病変,Barthel Index>0,嚥下音良好,フードテスト4 点以上からなる予測式を本研究では考案した.経口摂取可能となる予測式の感度,特異度は84.7%,66.7% であり,有効度は78.7% であった.
【結論】本研究で考案した予測式は,急性期病院で対象となる脳梗塞および脳出血患者における急性期病院または回復期病院退院時の経口摂取の可否を予測するうえで有用な予測式であった.