日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
嚥下障害患者における舌圧と摂食嚥下機能の関連
青木 佑介太田 喜久夫
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2014 年 18 巻 3 号 p. 239-248

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抄録

【目的】摂食嚥下において舌運動は,口腔内で食塊形成を行い,咽頭へ送り込むなど重要な役割を担っている.近年,舌圧が舌運動機能や摂食嚥下機能に関係する一要因として注目されている.今回,健常者および摂食嚥下障害患者の舌先端拳上圧の評価を行い,摂食嚥下機能との関連性について検討した.

【対象と方法】健常者107名,摂食嚥下障害患者66名を対象とした.全例に対しJMS舌圧測定器を用いて,舌先端拳上圧(舌圧)を評価した.健常群は性別,年齢を調査し,摂食嚥下障害群は嚥下障害重症度分類(DSS),摂食状況(ESS),functional oral intake scale(FOIS)を評価した.また,VF所見との検討を行った.

【結果】健常群では最大舌圧において性別間に有意差がみられ(p<0.01),男性において年齢と相関がみられた(r=-0.30).しかし,嚥下時舌圧では,性別,年齢ともに関連がみられなかった.嚥下障害群では,最大舌圧とDSS, ESS, FOIS との間で相関がみられた(r=0.33~0.58).また,VF 所見では,最大舌圧と口腔残留,食塊形成,送り込み,喉頭蓋谷残留で強い相関がみられた(r=0.51~0.82).さらに,嚥下時舌圧でも,口腔残留,食塊形成,送り込み,喉頭蓋谷残留の間で相関がみられた(r=0.45~0.75).しかし,梨状窩残留では,ともに相関は弱かった(r=0.32,0.33).

【考察】舌圧評価は,舌機能を簡易的かつ定量的に測定することができる.舌圧は,摂食嚥下障害の重症度,推奨される食形態を決定する一指標になると考えられた.また,VF との関連より,舌圧は食塊形成,送り込みなどの舌運動機能,喉頭蓋谷残留と相関することから,摂食嚥下の口腔期から咽頭期にも関連することが示唆された.そして,舌圧強化は,口腔期や咽頭期の摂食嚥下機能の改善や予防につながると考えられた.

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© 2014 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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