日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
非定型抗精神病薬が嚥下機能に与える影響
杉下 周平今井 教仁藤原 隆博佐々木 礼香長谷川 健吾石川 絵美子古西 隆之名和 巌野﨑 園子松井 利浩
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2014 年 18 巻 3 号 p. 249-256

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抄録

【目的】非定型抗精神病薬による嚥下機能への影響を検討することを目的とした.

【対象】対象は,平成22 年7 月より平成23 年6 月の間に調査参加施設入院中に非定型抗精神病薬が投与された患者69 名(76.3±14.2 歳)である.

【方法】薬剤投与後,3日間連続して反復唾液嚥下テスト,改訂水のみテスト,臨床的重症度分類にて嚥下状態を評価した.この評価すべてで問題が生じた場合を嚥下障害発症と定義し,発症時と軽快時にUnified Parkinson's Disease Rating Scale(錐体外路症状スコア),Barthel Index,嚥下造影(VF)を実施した.

【結果】嚥下障害は69 名中13 名(18.8%)に認めた.投与薬剤は全例リスペリドンであった.1 回当たりの投与量は0.5 mg が4 名,1 mg が9 名で,発症までの投与回数は初回が9 名,連日2 回が3 名,3 回投与が1 名であった.

VF 画像では,軽快時に比べ発症時に食塊の口腔通過時間が延長し,嚥下反射も延長していた.また,舌骨前方挙上距離も発症時に短縮していた.嚥下障害が軽快するまでの期間は平均12.3±8.9 日であった.

【考察】非定型抗精神病薬であるリスペリドンでは,これまでの認識に反して高率に嚥下障害が発症していた.さらに,投与量や投与回数,症状が遷延したことも注目すべきことである.VF からは,薬剤が嚥下に関連する運動と知覚に影響している可能性が示された.不穏やせん妄に対する非定型抗精神病薬の投与に当たっては,嚥下障害が出現する可能性があることを念頭に置くべきである.

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© 2014 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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