日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
嚥下内視鏡検査における誤嚥の有無と体内の炎症反応についての検討
若杉 葉子野原 幹司奥野 健太郎深津 ひかり上田 菜美戸原 玄阪井 丘芳
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2015 年 19 巻 1 号 p. 11-16

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抄録

嚥下機能検査における誤嚥の有無と検査後の実生活における発熱や肺炎発症の有無は必ずしも一致せず,乖離がみられることが少なくない.我々は,検査後の経過を評価する指標として,体内の炎症反応の指標となるC 反応性蛋白(以下,CRP)を用いている.今回,微量採血から測定可能な簡易CRP を用いて,誤嚥の有無とCRP, 経過時の発熱の関係を調べたので報告する.

対象は,嚥下障害が疑われる65 歳以上の患者68 例.嚥下内視鏡検査(以下,VE)により誤嚥の有無を評価した.同日にCRPを測定し,0.3 mg/dl 未満を陰性とした.また,検査後3 カ月以内の発熱の有無を評価し,VE 結果,CRP 判定,経過時の発熱の有無の関係について検討した.

VE 結果とCRP 判定では,誤嚥なし19 例中5 例,顕性誤嚥22 例中11 例,不顕性誤嚥27 例中14 例がCRP 陽性であり,3 群のCRP 陽性率に有意差は認めなかった.VE 結果と発熱の有無では,誤嚥なし19 例中8 例,顕性誤嚥22 例中9 例,不顕性誤嚥27 例中13 例に発熱を認め,3 群間の発熱の有無に有意差は認めなかった.CRP 判定と発熱の有無では,CRP 陰性38 例中10 例,CRP 陽性30 例中20 例に発熱を認め,2 群間で有意差を認めた.

検査時の誤嚥の有無と,検査後の実生活における発熱およびCRP 判定は乖離していた.検査時の誤嚥は,体内の炎症反応や検査後の発熱と直結しない可能性が示唆された.

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© 2015 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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