【目的】3 種類の異なる形状のスプーンを用いて,スプーンの形状が捕食に及ぼす影響を明らかにした.
【対象と方法】対象は,健康な若年成人47 名(男性10 名,女性37 名,平均年齢20.5 歳±0.82)である.3 種類のスプーンのボウル部に小型圧力センサを埋入し,柄にひずみ計をつけた.3 種類のスプーンの幅/長さ/ ボウル部の縁からセンサまでの深さ/ ボウル部の縁からボウル部の底までの厚さは,スプーンa: 28/43/1/4 mm,スプーンb: 28/34/1/6 mm,スプーンc: 28/34/1/4 mm である.これらのスプーンにプリン4 ml をのせ,自食にて摂取した.計測項目は,口唇圧積分値・口唇圧持続時間・口唇圧最大値,下唇接触積分値・下唇接触持続時間・下唇接触最大値(絶対値),曲げ積分値・曲げ持続時間・曲げ最大値である.また,波形パターンについて分析を行った.
【結果と考察】3 種類のスプーン間で口唇圧各項目には有意差は認められなかったが,ボウル部の厚いスプーンb では,下唇接触積分値・下唇接触最大値(絶対値),曲げ最大値が有意に大きくなることが示された.スプーンb では,捕食時にスプーンを下唇に接触させ,よりスプーンの安定性を高めていること,ボウル部のカーブに沿うように操作しながらスプーンを引き抜いていることが考えられた.一方,すべてのスプーンの捕食において,下唇接触,曲げ,口唇圧波形の時間的関係を検討した結果,最初にボウル部が下唇に接触し,後に上唇に触れながらスプーンが引き抜かれ,その間に口唇圧が発生するという共通のパターンで行われていることが明らかとなった.
【結論】スプーンのボウル部の形状は,自食時の捕食動態に影響を与えることが示唆された.