日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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短報
高齢者と若年者との夜間睡眠中の嚥下頻度,覚醒時の唾液分泌量および嚥下反射との関係
秦 さと子藤田 英恵伊東 朋子
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2015 年 19 巻 1 号 p. 63-68

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抄録

【目的】夜間睡眠中に起こりやすい不顕性誤嚥は,高齢者肺炎の主要原因の一つであり,夜間睡眠中の嚥下機能の解明が高齢者肺炎予防の手がかりとなると考える.そこで,高齢者の夜間睡眠中の嚥下状態の実態および覚醒時の安静時唾液分泌量と嚥下反射潜時との関係を明らかにすることで,高齢者肺炎予防の一助となることを目的とした.

【対象】嚥下障害の既往のない20 歳代成人10 名(若年者群)と,65 歳以上の高齢者9 名(高齢者群)とした.

【方法】咽喉頭マイクロフォンを用いて睡眠中の嚥下音をIC レコーダーに録音し,音声波形に変換後,嚥下音と嚥下波形から嚥下回数を測定し,高齢者群と若年者群で比較した.また,日中覚醒時に嚥下反射潜時と,就寝前に安静時唾液分泌量を測定し,両者それぞれ,および年齢と嚥下頻度との関係を分析した.

【結果・考察】夜間睡眠中の嚥下頻度は,高齢者群で平均4.22±1.06 回/ 時,若年者群で平均4.39±1.26回/ 時であった.対応のないt 検定を行ったところ,若年者群と高齢者群では有意な差はみられなかった.このことより,夜間睡眠中の嚥下頻度は加齢の影響を受けない可能性が示唆された.また,高齢者群の嚥下反射潜時は若年者群に比べ有意に延長しており,高齢者群の安静時唾液分泌量は若年者群に比べ有意に減少していた.しかし,嚥下頻度と安静時唾液分泌量,嚥下頻度と嚥下反射潜時,嚥下頻度と年齢にはすべて,有意な関係はなかった.このことより,健康高齢者の夜間睡眠中の嚥下頻度は,覚醒時の安静唾液分泌量や嚥下反射潜時からは推定することが難しい可能性が示唆された.

【結論】夜間睡眠中の嚥下頻度は加齢性に減少しない可能性が示唆された.また,夜間睡眠中の嚥下頻度は,年齢や覚醒時の嚥下機能,唾液分泌量とは関係がない可能性が示唆された.

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© 2015 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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