2015 年 19 巻 2 号 p. 109-116
【目的】嚥下障害者に提供するとろみの程度を示す共通言語として,日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会から,学会分類2013(とろみ)が示された.この分類には,粘度値やLine Spread Test(LST)の値といった客観的な数値の範囲が示されているが,これは主にキサンタンガム系のとろみ剤を水に溶解した試料を用いた官能評価により,範囲が決定された.そこで本研究では,キサンタンガム系とは性質の異なるとろみを評価した場合に,粘度,LST 値にどのような影響が生じるのかを検証した.
【方法】キサンタンガム系のとろみ3 種類,グアーガム系のとろみ1 種類,とろみつき栄養剤2 種類の計 6 種類の試料を用い,健常者161 名の官能評価による粘度の順位づけ,粘度測定およびLST を行い,これらが学会分類2013(とろみ)で評価される段階により比較を行った.
【結果および考察】とろみつき栄養剤では,官能評価は中間のとろみまたは濃いとろみと評価されたが,粘度測定結果で濃いとろみまたは濃いとろみ以上,LST 値で薄いとろみ以下に分類された.グアーガム系のとろみでは,官能検査で中間のとろみと評価されたが,LST 値で薄いとろみに分類された.これらのことから,粘度値やLST値を学会分類2013(とろみ)で評価すると,キサンタンガム系のとろみとは性質の異なるとろみを用いた場合,ヒトの粘性感覚とは異なる場合があることが示された.学会分類2013(とろみ)を用いて,キサンタンガム系以外のとろみ剤や水以外の溶媒を使用した挙動の異なるとろみを評価する場合,このように学会分類に合わない試料があることを念頭に置いて使用する必要がある.