日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
Down 症候群の小児における摂食嚥下機能の後方視的調査
─地域療育センターにおける支援方法の検討─
髙橋 摩理冨田 かをり弘中 祥司大屋 彰利原 仁高木 一江
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2015 年 19 巻 2 号 p. 165-171

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抄録

Down症候群の小児(以下,Down症児)の粗大運動発達と離乳開始時期の関係,摂食機能療法開始時期がその後の摂食機能獲得に及ぼす影響等を調査し,地域療育センターにおける支援体制を検討することを目的に本研究を行った.

対象は,地域療育センター摂食嚥下外来を受診した初診時年齢3歳以下のDown症児62名である.対象児の医療カルテから粗大運動発達の経緯を,摂食カルテから初診時月齢,初診時摂食嚥下機能,離乳開始時期,経過についての情報を得た.また,対象児を初診時月齢18カ月以下の男児(以下EB)19名,同女児(以下EG)24名,初診時月齢19カ月以上36カ月以下の男児(以下LB)10名,同女児(以下LG)9名の4群に分け,各群と初診時の摂食嚥下機能との関連,摂食嚥下機能の獲得時期との関連を検討した.

Down症児の粗大運動発達には遅れがみられたが,離乳開始時期は定型発達児と同じ時期であった.その結果,座位安定前に離乳を開始している児が多く,安定した姿勢での経口摂取を行うために理学療法との連携が必要と思われた.

初診時摂食嚥下機能に男女差が認められなかったことから,初診時期(EB・EGとLB・LG間)で比較した結果,摂食嚥下機能獲得までに要する月数は初診時月齢による差がなく,早期から指導を開始することで機能獲得時期も早まると思われた.さらに,機能獲得率はEB・EGで高い項目があり,早期に覚える機能を確実に獲得するためにも,早期介入の有効性が示唆された.また,離乳期の発達に沿った機能獲得を指導することが望ましいと考えられ,センター受診直後から摂食に関する情報を提供し,継続した支援を行える体制を整える必要があると思われた.

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© 2015 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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