1998 年 2 巻 1 号 p. 40-43
頚部に後屈位の強い多発脳梗塞例に対して嚥下訓練を実施し経口摂取の自立を図った.耳鼻咽喉科医は嚥下評価と経口摂取開始時期の判断を担当し,作業療法士が頚部のリラクゼーションを中心に基礎的嚥下訓練を,病棟が段階的摂食訓練を主に実施した.結果,開始時強かった頚部後屈位は,最終転院時では3時間程度の車椅子座位で姿勢は良好となった.それに合わせて食事も移行食(全粥とつぶし)が30分程で自力で取れるまでに改善した.咽せの状態も12月以降スプーンでの取り込みに限って見られなくなった.本症例は先行期から咽頭期の嚥下障害と考えられ,嚥下訓練とチームアプローチによって経口摂取が自立した.