日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
臨床報告
気管切開患者の誤嚥の評価
―Blue Dye Marker法の手法と有用性―
大宿 茂桑村 圭一玉木 紀彦
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1998 年 2 巻 1 号 p. 44-48

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抄録

Blue Dye Markerを用いた評価法(以下BDM法)は気管切開術を施行し,気管カニューレを留置した患者の誤嚥を評価する目的で発展してきた.BDM法は青色色素で着色した液体を経口投与し,カニューレを通した吸引において色素の混入を認めるか否かで誤嚥の有無を判定する方法である.今回カニューレを留置した14症例を対象に,2種類の手法を施行し,その臨床活用における有用性について検討した.

気管カニューレとしては,カフ付カニューレより吸引管付カフ付カニューレを使用した方が検査の精度が高く,BDM法に適していた.吸引管付カフ付カニューレを使用した手法の具体的手技は以下の如く要約できた.

1)気管内を吸引し分泌物を除去する.

2)カフを膨張させ誤嚥したマーカーがカフ上で貯留する状態にしておく.

3)吸引圧はかけない状態で,青色に着色した30ccのマーカーを3回に分け服用させる.10ccずつ口にふくませ嚥下を確認してから次のマーカーを投与する.

4)1分間マーカーが下降してくるのを待つが,その間ペンライトで窓穴を照らしマーカー侵入の有無を見る.

5)吸引管から吸引し,マーカー混入の有無を検索する.吸引は吸引管に入ってくる分泌物がなくなるまで続ける.

6)陰性の場合は同じ手順をもう一度最初から繰り返す.

7)この手法を二日連続施行し結論を得る.

 吸引管付カフ付カニューレを使用すれば,BDM法の精度を上げることができる.しかし,誤嚥したマーカーが極めて微量であった場合など,検出できない可能性はあり,評価結果が陰性の場合でも経口摂取は慎重に進めるべきである.

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© 1998 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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