2016 年 20 巻 3 号 p. 114-123
【目的】本研究は,慢性呼吸器疾患患者を対象に呼吸と嚥下の調整に関するスクリーニングテストを実施し,誤嚥の要因とされる吸気相嚥下の発生頻度と,呼吸機能,および呼吸器疾患の予後因子でもある痩せの関連性を調査することを目的とした.
【研究方法】COPD 6 例,間質性肺炎9 例,気管支拡張症5 例を含む20 例の慢性呼吸器疾患患者に対して唾液(30 秒間),水(10 ml×5),ゼリー(5 g×5)の嚥下テストを実施した.呼吸運動検出に気流圧センサーと胸腹部インダクティブセンサーを,嚥下音検出のために咽喉マイクを使用し,嚥下は嚥下性無呼吸期間に起こる嚥下音で確認した.呼気相に挟まれた嚥下を呼気相嚥下,それ以外を吸気相嚥下とした.吸気相嚥下の回数と痩せ,また吸気相嚥下の頻度と呼吸機能の関係について調査した.
【結果】唾液,および水嚥下において吸気相嚥下は痩せと関係していた(唾液:p<0.05,水:p<0.01).また水嚥下において,TV は吸気相嚥下と関係していた(p<0.05).痩せ群では筋量(AMC:p<0.01,推定SMI:p<0.001),呼吸機能(IC:p<0.01)は有意に低く,筋力(握力)および運動耐容能(6MWD)は低値を示した.
【考察】慢性呼吸器疾患患者では,吸気相嚥下が高率に起こるが,その頻度は特に痩せ群において有意に高く,サルコぺニアが疑われるような痩せが吸気相嚥下の一要因である可能性が示唆された