日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
急性脳疾患の小児における嚥下機能の予後予測
黒木 はるか池嵜 寛人清永 紗知大道 奈央蓑田 健太立野 伸一
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2016 年 20 巻 3 号 p. 124-131

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抄録

【目的】小児の急性脳疾患では,急性期における原因疾患への治療が終了しても嚥下障害が残存する場合がある.そこで,本研究では,このような急性脳疾患を発症し後天的に嚥下障害を呈した小児において,初回評価時の所見から急性期の治療が終了した時点での嚥下リハビリテーションを継続する必要性の有無を予測しうる項目の抽出と当院退院1 年後の嚥下機能を調査した.

【対象】2009 年4 月から2014 年3 月までに急性脳疾患により当院に入院し,言語聴覚士が1 週間以上介入した15 歳以下の乳児から学童以降の42 名を対象とした.

【方法】検討方法:急性期の治療が終了した時点でカンファレンスを開催し,生活年齢相応の嚥下機能まで改善していると判断された対象を嚥下リハ終了群,嚥下障害が残存し嚥下リハビリテーションの継続が必要と判断された対象を嚥下リハ継続群とした.検討項目には,患者背景と初回評価時の所見から14 項目をあげた.なお,嚥下リハ継続群については,当院退院から1 年後の嚥下障害の有無も追跡調査を行った.解析方法:グループ間の比較には対応のないt 検定,カテゴリデータの比較にはカイ二乗検定,フィッシャーの正確確率検定を用いた.急性期の治療を終了した時点での嚥下機能に影響する項目の検討には,名義ロジスティック回帰分析を行った.

【結果】嚥下リハ終了群26 名,嚥下リハ継続群16 名であった.急性期の治療を終了した時点での嚥下機能に影響する項目として,GCS 中等症・重症,呼吸器疾患合併,発症前精神発達遅滞・発達障害,湿性咳嗽・むせの4 項目が予測因子として抽出された.嚥下リハ継続群の75.0% は退院1 年後に嚥下障害が軽快していた.

【結論】急性期病院退院時の嚥下機能を予測する因子として,4項目が重要であった.嚥下障害が残存した場合でも,嚥下リハビリテーションを継続することで嚥下機能の改善が認められた.

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© 2016 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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