日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
症例報告
喉頭水平半切除術後の患者に対する息こらえ嚥下の指導
三串 伸哉吉田 良子林 加奈子野上 沙耶香久松 徳子前田 耕太郎鮎瀬 卓郎
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2016 年 20 巻 3 号 p. 149-155

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抄録

初診時71 歳,男性.62 歳時に中咽頭癌に対し中咽頭部分切除術,喉頭水平半切除術,両側頚部郭清術,気管切開術が行われ,追加で化学放射線療法が施行された.術後腫瘍の再発は認めなかったが,肺炎,低栄養,脱水を繰り返していた.71 歳時夏,誤嚥性肺炎による入院を機会に摂食嚥下リハビリテーションの介入を開始した.

入院経過: 第3 病日に嚥下内視鏡検査,第5 病日に嚥下造影検査を実施した.喉頭閉鎖不全および咽頭収縮不全があり,不顕性誤嚥を認めた.リクライニング位および側臥位にてペースト食(嚥下調整食2-1)から食事を開始し,息こらえ嚥下の指導を行った.息こらえ嚥下の習得につれて座位での摂取に移行できた.第19 病日に施行した嚥下造影検査では息こらえ嚥下で代償的に誤嚥防止が出来ており,食形態は全粥,刻み食(嚥下調整食4),水分のとろみ不要とし21 病日に自宅退院となった.退院後は肺炎を起こさず1 年を経過した.中咽頭癌に対する喉頭水平切除術は喉頭閉鎖不全による誤嚥が問題となる.本症例では,息こらえ嚥下を利用することで誤嚥を防止し,良好な経過が得られた.喉頭水平切除術を行う患者に対しては息こらえ嚥下の習得が有効と考えた.

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© 2016 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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