2017 年 21 巻 1 号 p. 20-26
【緒言】著者は超低出生体重児の女児を授かり,NICU 退院後に哺乳困難が出現したため,在宅で経鼻栄養法を導入した.児の親として経口摂取機能の獲得を強く願い,その結果11 カ月の期間をかけて経口摂取機能を獲得した.その経過について,家族の立場をふまえて報告する.
【症例】在胎24 週4 日631 g で出生.急性期の脳室内出血(IVH2 度)を合併.生後164 日,3976 g にて自宅退院.
【経過】直接母乳は困難であり,搾母乳を哺乳瓶で500 ml/day 前後摂取できていた.しかし,1 回哺乳量は40 ml 前後であり,1 日10~14 回と頻回に哺乳する必要があった.生後209 日より300 ml/day と哺乳量が低下しはじめ,体重減少を認めたため,経鼻栄養法にて600 ml/day から栄養管理を開始した.生後292日,将来的な経口摂取機能を獲得するために摂食嚥下診療を専門とする病院を受診し,経管栄養前の練習として味覚刺激法を指導された.また,今後1 年程度で経口摂取に移行できる可能性があることを伝えられた.徐々に少量の経口摂取が行えるようになったが,生後400 日頃より摂食機能の発達の停滞がみられた.これまで,経鼻栄養200 ml を4 時間間隔で5 回注入していたが,生後420 日より日中に8 時間間隔を空け空腹感を与えて経口摂取を行った.しかし,経口摂取量は伸び悩んだため,生後470 日より経鼻栄養量を段階的に減量した.経鼻栄養量を減量したことで,徐々に経口摂取量の増加がみられた.週に1 回経鼻チューブを抜去し,1 日の経口摂取量を確認した.経鼻チューブを離脱するタイミングを検討し,生後526 日に完全に経口摂取へと移行した.
【まとめ】経鼻栄養法は一時的な栄養管理としては有効と思われるが,経鼻栄養法を開始した早期より,今後の経口摂取機能を獲得する時期的な予測と,獲得に向けた段階的な計画を明確にする必要があると考えられた.