日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
アイトラッカーを用いた若年者における食品の嗜好と視線との関連
安井 由香松尾 信至覺道 昌樹田中 順子田中 昌博
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2017 年 21 巻 1 号 p. 11-19

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抄録

【目的】ミキサー食のような食形態は,視覚により食イメージが悪化し,嗜好レベル低下による食欲減退の原因となることが危惧されている.意志疎通が困難な患者において,食品嗜好の客観的な判定にアイトラッキングシステムが有効であると考えた.本研究の目的は,アイトラッキングシステムを用いて,食品の嗜好と視線との関連の有無を明らかにすることとした.

【対象と方法】対象は,20 歳以上の若年の健常成人50 名とした.アイトラッカーユニットを,刺激画像を提示するディスプレイの下部に取り付けた.その後,被験者に計5 枚の刺激画像をランダムに提示し,アイトラッキングを行った.刺激画像は,2 種類の食品の写真を左右に配置したものとし,食品は,① 食パンとサンドウィッチ,② 卵焼きとゆで卵,③ おにぎりとご飯,④ ポテトチップスとポテトフライおよび⑤ りんごとすりおろしりんご,とした.アイトラッキング終了後,被験者に各刺激画像を再度提示し,嗜好レベルの聴き取り調査を行った.解析項目は,嗜好レベルに対する注視点の停留回数および嗜好レベルに対する注視点の合計停留時間とした.統計学的解析として,Wilcoxon の符号付き順位和検定を行った.有意水準は5% とした.

【結果と考察】嗜好レベルの高い食品において,注視点の停留回数は有意に多く,注視点の停留時間は有意に長くなった.以上から,若年健常成人では,食品の嗜好と視線に関連があることが示された.

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© 2017 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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