日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
21 巻, 1 号
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著
  • 戸原 雄, 菊谷 武, 矢島 悠里, 五十嵐 公美, 田中 康貴, 田村 文誉
    2017 年 21 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2020/04/22
    ジャーナル フリー

    【目的】要介護高齢者の多くは口腔器官の運動障害を有しており,咀嚼機能に合わせた食形態の指導が重要である.本研究では,市販咀嚼訓練食品を用いて咀嚼機能を判定する方法の開発を目的とした.

    【方法】市販咀嚼訓練食品を,規格化された型抜きを用いて2 g の半円柱状とし,色の異なる2 つを合わせることで4 g の円柱を作製して検査食とした.対象者が検査食を咀嚼している場面の外部観察評価と,内視鏡下嚥下機能検査を用いて観察した咽頭流入してくる検査食の食塊性状の観察を行った.対象者の性別,年齢,JCS,初診時の食形態,初診時の食事摂取レベル(FILS),評価後の摂食嚥下グレード(藤島のグレード),咀嚼回数,咀嚼時間,および外部観察による咀嚼評価,を評価項目とし,評価項目と咽頭内の食塊性状の関連を検討した.検査者間信頼性の検討のために級内相関係数ICC(2,1)を算出した.

    【結果】外部観察による咀嚼評価および咽頭流入した検査食の性状評価のICC(2,1)はそれぞれ,0.898,0.964 であった.外部観察による咀嚼運動評価と咽頭流入した検査食の食塊性状には,有意な相関を認めた(p<0.001).平均咀嚼回数,平均咀嚼時間はいずれも,咽頭流入した検査食の性状の違いにより有意差を認めた(p<0.05).

    【結論】本研究により,市販咀嚼訓練食品を検査食として摂取の観察を行うことで,咽頭流入時の食塊性状が推測可能であることから,咀嚼能力を判定する際に有用である可能性が示された.

短報
  • 安井 由香, 松尾 信至, 覺道 昌樹, 田中 順子, 田中 昌博
    2017 年 21 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2020/04/22
    ジャーナル フリー

    【目的】ミキサー食のような食形態は,視覚により食イメージが悪化し,嗜好レベル低下による食欲減退の原因となることが危惧されている.意志疎通が困難な患者において,食品嗜好の客観的な判定にアイトラッキングシステムが有効であると考えた.本研究の目的は,アイトラッキングシステムを用いて,食品の嗜好と視線との関連の有無を明らかにすることとした.

    【対象と方法】対象は,20 歳以上の若年の健常成人50 名とした.アイトラッカーユニットを,刺激画像を提示するディスプレイの下部に取り付けた.その後,被験者に計5 枚の刺激画像をランダムに提示し,アイトラッキングを行った.刺激画像は,2 種類の食品の写真を左右に配置したものとし,食品は,① 食パンとサンドウィッチ,② 卵焼きとゆで卵,③ おにぎりとご飯,④ ポテトチップスとポテトフライおよび⑤ りんごとすりおろしりんご,とした.アイトラッキング終了後,被験者に各刺激画像を再度提示し,嗜好レベルの聴き取り調査を行った.解析項目は,嗜好レベルに対する注視点の停留回数および嗜好レベルに対する注視点の合計停留時間とした.統計学的解析として,Wilcoxon の符号付き順位和検定を行った.有意水準は5% とした.

    【結果と考察】嗜好レベルの高い食品において,注視点の停留回数は有意に多く,注視点の停留時間は有意に長くなった.以上から,若年健常成人では,食品の嗜好と視線に関連があることが示された.

症例報告
  • 坂下 宗祥, 坂下 めぐみ, 坂下 重子, 長谷 剛志
    2017 年 21 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2017/04/30
    公開日: 2020/04/22
    ジャーナル フリー

    【緒言】著者は超低出生体重児の女児を授かり,NICU 退院後に哺乳困難が出現したため,在宅で経鼻栄養法を導入した.児の親として経口摂取機能の獲得を強く願い,その結果11 カ月の期間をかけて経口摂取機能を獲得した.その経過について,家族の立場をふまえて報告する.

    【症例】在胎24 週4 日631 g で出生.急性期の脳室内出血(IVH2 度)を合併.生後164 日,3976 g にて自宅退院.

    【経過】直接母乳は困難であり,搾母乳を哺乳瓶で500 ml/day 前後摂取できていた.しかし,1 回哺乳量は40 ml 前後であり,1 日10~14 回と頻回に哺乳する必要があった.生後209 日より300 ml/day と哺乳量が低下しはじめ,体重減少を認めたため,経鼻栄養法にて600 ml/day から栄養管理を開始した.生後292日,将来的な経口摂取機能を獲得するために摂食嚥下診療を専門とする病院を受診し,経管栄養前の練習として味覚刺激法を指導された.また,今後1 年程度で経口摂取に移行できる可能性があることを伝えられた.徐々に少量の経口摂取が行えるようになったが,生後400 日頃より摂食機能の発達の停滞がみられた.これまで,経鼻栄養200 ml を4 時間間隔で5 回注入していたが,生後420 日より日中に8 時間間隔を空け空腹感を与えて経口摂取を行った.しかし,経口摂取量は伸び悩んだため,生後470 日より経鼻栄養量を段階的に減量した.経鼻栄養量を減量したことで,徐々に経口摂取量の増加がみられた.週に1 回経鼻チューブを抜去し,1 日の経口摂取量を確認した.経鼻チューブを離脱するタイミングを検討し,生後526 日に完全に経口摂取へと移行した.

    【まとめ】経鼻栄養法は一時的な栄養管理としては有効と思われるが,経鼻栄養法を開始した早期より,今後の経口摂取機能を獲得する時期的な予測と,獲得に向けた段階的な計画を明確にする必要があると考えられた.

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