2017 年 21 巻 1 号 p. 3-10
【目的】要介護高齢者の多くは口腔器官の運動障害を有しており,咀嚼機能に合わせた食形態の指導が重要である.本研究では,市販咀嚼訓練食品を用いて咀嚼機能を判定する方法の開発を目的とした.
【方法】市販咀嚼訓練食品を,規格化された型抜きを用いて2 g の半円柱状とし,色の異なる2 つを合わせることで4 g の円柱を作製して検査食とした.対象者が検査食を咀嚼している場面の外部観察評価と,内視鏡下嚥下機能検査を用いて観察した咽頭流入してくる検査食の食塊性状の観察を行った.対象者の性別,年齢,JCS,初診時の食形態,初診時の食事摂取レベル(FILS),評価後の摂食嚥下グレード(藤島のグレード),咀嚼回数,咀嚼時間,および外部観察による咀嚼評価,を評価項目とし,評価項目と咽頭内の食塊性状の関連を検討した.検査者間信頼性の検討のために級内相関係数ICC(2,1)を算出した.
【結果】外部観察による咀嚼評価および咽頭流入した検査食の性状評価のICC(2,1)はそれぞれ,0.898,0.964 であった.外部観察による咀嚼運動評価と咽頭流入した検査食の食塊性状には,有意な相関を認めた(p<0.001).平均咀嚼回数,平均咀嚼時間はいずれも,咽頭流入した検査食の性状の違いにより有意差を認めた(p<0.05).
【結論】本研究により,市販咀嚼訓練食品を検査食として摂取の観察を行うことで,咽頭流入時の食塊性状が推測可能であることから,咀嚼能力を判定する際に有用である可能性が示された.