日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
高齢者の摂食嚥下機能と頚部筋力
坂口 紅美子原 修一
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2017 年 21 巻 2 号 p. 61-70

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抄録

【目的】高齢者は加齢性変化により,摂食嚥下障害を来たしやすい.今回,頚部筋力と摂食嚥下機能の関連を調査した.さらに,握力測定,構音検査,ADL 評価を行い,間接的嚥下評価への汎用性を検討した.

【方法】対象は,健常群8 名と入院群26 名とし,入院群は,2014 年1 月から11 月までにA 病院に入院し,言語聴覚療法の処方があった70 歳以上90 歳未満の検査方法が理解可能であった者とした.評価方法は,頚部筋力測定,反復唾液嚥下テスト(RSST),改訂水飲みテスト(MWST),関連項目(年齢,性別,疾患名)の情報収集を行った.入院群のみ,握力測定,ADL 評価(Barthel Index:BI),構音検査(oral diadochokinesis:OD)も実施した.統計解析は,健常群にて級内相関係数,入院群において,偏相関分析,重回帰分析を行った.また,両群においてSpearman の順位相関係数を決定した.健常群と入院群内で嚥下障害の有無による群分けを行い,群間比較を行った.

【結果】健常群におけるICC は0.921 であった.入院群の相関分析において頚部筋力すべてと相関関係が認められた項目は,年齢,MWST,左右握力であった.偏相関分析では,握力以外は相関分析と同様の結果となった.重回帰分析では,頚部筋力とOD(/ta/)を独立変数とする回帰式が得られた.群間比較では,入院群の嚥下障害有群で,すべての項目において有意に低い値となった.

【考察】高齢者の摂食嚥下機能と頚部筋力に関連があることが示唆された.全身の筋力が低下している場合,頚部筋力,摂食嚥下機能も低下している可能性が考えられた.頚部筋力の評価は,間接的嚥下評価の一側面になりうる可能性が示唆された.

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© 2017 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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