日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
在宅要介護高齢者における摂食嚥下障害と疾患特異的QOL との関連
森澤 広行香川 幸次郎
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2017 年 21 巻 2 号 p. 83-91

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抄録

【目的】要介護高齢者の増加とともに,摂食嚥下障害を抱える在宅虚弱高齢者のQOL が注目されてきている.これまでの研究では,摂食嚥下障害が要介護高齢者のQOL を低下させることが指摘されているが,QOL を測定する尺度は一般の人を対象とした尺度が用いられているのみである.しかし,摂食嚥下障害に特化したQOL を測定するためには,疾患特異的QOL 尺度を用いる必要がある.また,どのような症状がQOL に関与するのかについても明らかになっておらず,介入の指針が示されていない.そのため,本研究では在宅要介護高齢者における摂食嚥下障害と疾患特異的QOL との関連を明らかにすることを目的とした.

【方法】通所リハビリテーションを利用している要支援1から要介護2までの高齢者64名(平均年齢79.3±7.3 歳)を対象とした.調査は,基本属性,食事に関する事項,ADL, DRACE, SWAL-QOL・SWAL-CARE,生活満足度について,面接調査法を用い実施した.誤嚥リスクの有無で2 群分けを行い,SWAL-QOL の結果を検討した.

【結果】誤嚥リスクは対象者の45.3% に存在することが確認された.誤嚥リスクの有無によるSWAL-QOLの下位項目の順位に大きな差は認めなかった.しかし,誤嚥リスクを有する群は,SWAL-QOL の負担,欲求,恐怖感,心の健康,コミュニケーション,疲労感においてQOL が有意に低下することが確認され,さらに唾液や口腔,咽頭などの症状が出現するほどQOL が低下することが確認された.

【結論】本研究では,1.本研究対象者の45.31% に誤嚥リスクが存在すること,2.SWAL-QOL の下位10項目の順位について,リスクの有無による順位に大きな差は認められないこと,3.誤嚥リスクがある群において,疾患特異的QOL が低下すること,4.唾液や口腔,咽頭などの症状がQOL を低下させること,が明らかになった.QOL 維持,向上を図るためには,摂食嚥下機能へのアプローチが欠かせないと考えられる.

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© 2017 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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