日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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Print ISSN : 1343-8441
短報
知的障害特別支援学校在籍児の窒息ニアミスと摂食機能の一考察
手塚 文栄中村 勇星出 てい子服部 沙穂里高木 伸子
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2017 年 21 巻 2 号 p. 92-98

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抄録

平成24 年度,A 県下の知的障害特別支援学校で窒息死亡事故が起こった.文部科学省から通知が出され,「食べる機能に障害がある児童生徒は,経験のある教員や医師・外部専門家に相談することが望ましい」とされた.

事故後,筆者らは外部専門家として窒息事故予防事業へ参加した.その際学童期の知的障害児の摂食機能や窒息事故について文献を探したが,ほとんど発見できなかった.知的障害児の摂食機能実態や窒息リスクについては,推測はできるが裏付けがない状況だと判断し,向井らの窒息事故調査を参考に,児童生徒の摂食機能に関するアンケート調査を担任に対して行った.

調査対象は,知的障害特別支援学校2 校の児童生徒489 名.調査の結果,14 名が窒息事故を起こしかけた経験をもっていた.この群をニアミス群とし,経験をもたない群を対照群とした.11 の質問項目についてカイ二乗検定を行ったところ,7 項目に有意差を認め,さらに2 項ロジスティック回帰分析後にROC曲線を描きカットオフ値を検討したところ,「ほとんど噛まずにのみこむ」「口に詰めこんで食べる」「ゴクンとするとき舌がでる」の3 項目合計が特に高い値を示し,窒息リスクの高い知的障害児童生徒の摂食機能関連要因であることが示唆された.また,ニアミス群14 名のうち9 名がダウン症児であった.

児童生徒の摂食嚥下機能障害をスクリーニングする方法があれば,障害児教育の専門家である教員と摂食機能に詳しい専門家で教育の場にふさわしい対応を考え,根拠のある窒息事故予防策を立てることができる.今後,本調査結果をスクリーニング項目として生かすには,窒息事故のレベルの客観化,妥当性の検討,追調査,3 項目のスクーリング試行などが必要と考える.

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© 2017 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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