日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
症例報告
重度嚥下障害患者における対応
―臨床倫理カンファレンスを行った 1症例―
岡本 圭史金沢 英哲北條 京子藤島 一郎
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2018 年 22 巻 1 号 p. 46-51

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抄録

摂食嚥下障害治療を取り巻く倫理的問題はさまざまで,対応に悩まされることがある.今回, 4分割表を用いた臨床倫理カンファレンスを実践した結果,方針決定に結びついた重度摂食嚥下障害の症例を報告する.症例は 87歳男性.診断名は反復性誤嚥性肺炎.全身状態不良で 3食経口摂取は困難であったが,本人は間欠的口腔胃経管栄養法(IOE法)以外の経管栄養を強く拒否した.その後, 1食のみ経口摂取可能となったが,高い誤嚥リスクがあり高度な技術をもった介助者のマンパワーが不足し, 3食経口摂取は困難で補助栄養が必須と思われた.患者からは「座って普通のご飯を食べて家に帰りたい」との訴えがあり,方針決定に難渋した.そこで, 4分割表を用いた臨床倫理カンファレンスを開催したところ,複数の倫理的ジレンマがあることにチームスタッフが気づくことができた.本人の「食べたい」という意向を最大限に尊重しながら, 1食経口摂取を継続するという方針となった.その結果,徐々に本人の気持ちに変化を認め,最終的には補助栄養として皮下埋込み型中心静脈ポート(CVポート)を選択し,療養型病院へ転院となった.臨床倫理カンファレンスを行ったことで,医療者本位の方針決定ではなく,患者の意思を最大限に尊重しながら推進することができた.臨床倫理カンファレンスで重要なことは,皆がその結論に納得できるプロセスとコンセンサスであると考える.

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© 2018 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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