日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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Print ISSN : 1343-8441
症例報告
直接訓練に干渉波電気刺激療法を併用し嚥下反射遅延が改善した 1例
杉下 周平今井 教仁福永 真哉松井 利浩
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2018 年 22 巻 1 号 p. 52-58

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抄録

【緒言】干渉波電気刺激療法(interferential current stimulation: IFC)では,嚥下反射を促進させる効果が期待されている.今回,嚥下反射の遅延と舌骨上筋群および咽頭筋群の筋力低下をきたした嚥下障害患者に,直接訓練と IFCを併用した訓練を行い良好な結果が得られたので報告する.【症例】 78歳女性のパーキンソン症候群の患者である.初診時の嚥下スクリーニングテストは正常範囲であったが,嚥下造影(VF)では液体嚥下で嚥下前誤嚥を認め, Penetration - Aspiration Scale(PAS)は 6,固形物の嚥下では咽頭残留を認めた.最大舌圧は低下していた.【経過】外来通院にて摂食嚥下訓練を行った.まず,舌抵抗訓練と冷圧刺激法に直接訓練を併用した訓練(従来訓練)を 8週間行った.従来訓練により最大舌圧は増加したが, VFでの PASや咽頭残留には改善はみられなかった. 2週間の訓練休止後に,直接訓練に IFCを併用した訓練(干渉波訓練)を 2週間行った.干渉波訓練により最大舌圧には変化はなかったが, VFでは PASは 1に改善,咽頭残留は消失した.  VF画像を用いた液体嚥下の定量解析では,嚥下反射の指標である STD, LEDTは従来訓練では変化はなかったが,干渉波訓練後には短縮していた.舌骨前方移動距離は従来訓練後,干渉波訓練後にそれぞれ増大した.舌骨挙上速度は従来訓練では変化はなく,干渉波訓練後に増大した.【考察】直接訓練に IFCを併用した訓練法は,舌骨の運動機能を向上させ,嚥下反射の遅延を改善することで嚥下障害を改善させた.直接訓練と IFCの併用は,嚥下反射が遅延した嚥下障害患者の訓練として有用であると思われる.

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© 2018 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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