日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
高解像度マノメトリーを用いた嚥下調整食(日本摂食嚥下リハビリテーション学会分類2013)に対する健常成人の嚥下動態の定量的評価
太田 恵未小金澤 大亮金城 舞安田 順一橋本 広季山田 茂貴玄 景華
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2019 年 23 巻 2 号 p. 79-88

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抄録

【緒言】日本では,高齢化に伴って,嚥下困難者用食品の需要は増加している.嚥下調整食の量や形態の違いが,嚥下動態にどのような影響があるのかを明らかにすることは,摂食嚥下障害患者の嚥下調整食の選択,リハビリテーションにおいて重要である.本研究は,健常成人を対象に,嚥下調整食の量や形態の違いが嚥下動態に与える影響を,高解像度マノメトリー(HRM)を用いて定量的に解析することを目的に行った.

【方法】被験者は健常成人男性10 人(平均年齢36.0±10.3 歳)であった.摂食嚥下リハビリテーション学会で提示されている5 段階の嚥下調整食(学会分類2013)コード0~4 に相当する米飯の既製品を用いた.HRMのカテーテルセンサーを外鼻孔より挿入,上部食道括約筋(UES)に留置して測定を行った.コードごとに3 g,6 g,9 g をランダムに摂取させ,被験者の自由意志に従って1 回で嚥下させた.数値は各被験者の2 回分の平均値のデータを用いた.各コードにおけるUES弛緩時間,上咽頭部や舌根部,下咽頭部における圧持続時間や最大内圧を測定項目とした.コードごとの量の変化の比較と,各コード間の比較を統計解析した.

【結果】UES弛緩時間は,すべてのコードで量が増加すると延長した.上咽頭部の圧持続時間は,コード2の6 g と9 g,コード3 の3 g と6 g,コード4 の3 g と9 g で量の増加により延長した.舌根部圧持続時間は,コード4 の3 g と9 g で量の増加により延長した.舌根部最大内圧は,コード2 の3 g と9 g,6 g と9 g で量の増加により低下した.すべての測定項目において,各コード間の比較で有意差を認めなかった.

【結論】健常成人において,嚥下調整食の量の増加はUES 弛緩時間を延長させ,一部の嚥下調整食の量の増加は,上咽頭部と舌根部の圧持続時間,舌根部の最大内圧を変化させることが示唆された.

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© 2019 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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