2020 年 24 巻 2 号 p. 113-120
【目的】本研究の目的は,急性期病院に入院した高齢循環器疾患患者を対象として摂食嚥下機能と自宅退院の可否の関連を検討することである.
【方法】自宅退院群は68例,自宅退院不可群19例であった.本研究のデザインは後方視的コホート研究とし,自宅退院可否に影響を与えると考えられる要因として年齢(≧ 75 歳 or <75)・嚥下性肺炎入院既往有無・同居家族有無・入院前食形態・入院前食事介助有無・認知症有無・ST 介入時改訂水飲みテスト(MWST: 0~3 or 4 ≦)・ST 介入時反復唾液嚥下テスト(RSST: 0~2 or 3 ≦)・ST 介入時摂食嚥下グレード(摂食嚥下Gr <7 or 7 ≦)・ST介入時摂食状況レベル(摂食状況Lv < 7 or 7 ≦)ごとにリスク比を算出し,各要因の特性を分析した.
【結果】統計学的検定により有意性が示された自宅退院不可となる要因のリスク比(95%CI)は「年齢≧75 歳」8.5(1.2~60.8),「ST 開始時摂食嚥下グレード< 7」3.0(0.9~9.4),「認知症有」2.8(1.2~6.1)の3 要因であった.
【結論】複数ある嚥下機能の指標のうち,摂食嚥下グレードだけが自宅退院可否のための独立した要因として検出されたことは,興味深い結果となった.摂食嚥下Gr は「食べることができる」能力を評価する.摂食嚥下Gr という能力水準の評価が自宅退院可否の要因として検出されたのは,嚥下機能・能力に関する総合的な評価指標であることが一因となっている可能性がある.これらの要因を考慮して,退院調整を入院早期から実施することで円滑な退院調整が可能になるものと考えた.