日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
重度の知的能力障害をともなった痙直性脳性麻痺児者における咽頭期嚥下の動態と咽頭残留の関係について
藤本 淳平中村 達也岸 さおり稲田 穣上石 晶子
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2020 年 24 巻 2 号 p. 143-152

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抄録

【目的】重度の知的能力障害をともなった痙直型脳性麻痺児者の咽頭期嚥下における下顎,舌骨,そして舌の動態および咽頭残留を健常成人と比較することにより,痙直型脳性麻痺児者における咽頭期嚥下の動態と嚥下後咽頭残留の関係性を探ることを目的とした.

【対象および方法】健常成人24 名(健常群)と重度の知的能力障害をともなった痙直型脳性麻痺児者22名(障害群)のペースト食品3–5 mL の嚥下を嚥下造影検査(VF)を用いて撮影し,30 フレーム/ 秒で動画記録した.画像上に第二頸椎および第四頸椎を結んだ線分を基準線とする座標系を設定し,フレームごとにオトガイ結節,舌骨体の上端と下端を結んだ直線の中間点,上顎中切歯舌側歯頸部最下点と喉頭蓋谷最下点を結ぶ直線の中心から放射状に8 等分した直線と舌表面の交点の座標位置を追尾することで,下顎と舌骨の運動方向ごとの移動距離および舌と口蓋および咽頭後壁の接触時間を測定した.さらに,舌骨運動終了後の咽頭残留を喉頭蓋谷領域と梨状陥凹領域に分け,測定した.そして,咽頭残留の領域ごとに健常成人の平均値の95% 信頼区間上限値を基準値とし,基準値以上を残留あり群,基準値未満を健常範囲群と群分けし,測定結果を群間比較した.さらに,領域ごとの嚥下後残留と各測定項目との相関係数を算出した.

【結果および考察】障害群では全般的に下顎の下制距離が大きく,舌前方–口蓋接触時間が短かった.そして,咽頭残留の部位によらず,残留あり群では健常群よりも舌骨の前方移動距離および舌後方–口蓋接触時間が短く,舌根–咽頭後壁接触時間が長かった.喉頭蓋谷の咽頭残留は下顎の下制距離との間に有意な偏相関を認め,梨状陥凹の咽頭残留は舌骨の前方移動距離との間に有意な偏相関を認めた.嚥下中の下顎の下制は舌運動に影響を与え,喉頭蓋の反転運動および舌根と咽頭後壁の接触を不十分にした可能性が考えられ,舌骨の前方移動距離の不足の要因としては,頭頸部の異常緊張や下顎の下制の影響によるオトガイ舌骨筋の収縮不全が考えられた.

【結論】重度の知的能力障害をともなった痙直型脳性麻痺児者においては,喉頭蓋谷の残留は下顎の下制距離と強い関連があり,梨状陥凹の残留は舌骨の前方移動距離の短縮と強い関連がある可能性があった.

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© 2020 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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