2021 年 25 巻 1 号 p. 22-32
【目的】日本リハ栄養研究会(現;日本リハ栄養学会)脳卒中データベース(DB, 2015)に登録された,補助栄養使用入院患者の摂食状況のレベル(FILS)における「経口摂取の向上」と,個人属性,施設条件との関係について,DB を二次利用して検証した.
【方法】対象は,日本リハ栄養DB 登録症例(13 病院)で,入院中に補助栄養を使用した患者232 名(平均82.2±9.5 歳)とした.独立変数は,性別・年齢など「疾患」7 項目,FIM, 栄養評価など「栄養・リハビリ評価」6 項目,「転帰」,「施設情報」の6 項目,全19 項目とした.各変数と従属変数「入退院時FILS差」(入院時FILS Lv.7 以上を除く)との関連は,Spearman 順位相関係数(ρ)で分析した.また,Mann-Whitney のU 検定,Kruskal-Wallis 検定で,各独立変数の「入退院時FILS 差」に関して分析した.検定の多重性を考慮して,有意水準は1% 未満とした.
【結果】本DB 分析対象は,年齢の中央値83.0[76.0‐89.0]歳であった.補助栄養使用入院患者の各変数と従属変数「入退院FILS 差」の相関分析結果は,「退院時FILS」(ρ=0.73),「退院時FIM」(ρ=0.66),において中程度相関があった(p<0.01).
「入退院FILS 差」の差の検定結果,「疾患」項目では,入退院時低栄養あり,で有意差があった(p<0.01).「栄養・リハビリ評価」は,入退院時MNA-SF C,において有意差があった(p<0.01).「転帰」は退院先,のみで有意差があった(p<0.01).
【結論】高齢の補助栄養使用入院患者における「経口摂取向上」は,退院時FILS,退院時ADL,入退院時栄養評価,退院先と関係がある点で先行研究と一致した.また,加齢や肺炎重症度,認知症などの合併症,施設情報との関係は低いという実践的示唆を得た