2021 年 25 巻 2 号 p. 129-134
症例は74 歳女性,皮膚筋炎の患者である.頸部と背部の発赤および歩行困難を認めたため,A 病院に入院した.A 病院入院後,全身倦怠感と嚥下障害が出現したため当院に転院し,皮膚筋炎と診断された.副腎皮質ステロイド療法および免疫抑制療法を施行したことで,クレアチンキナーゼや筋痛および皮膚症状など筋炎の症状は軽快したが,咽頭残留を主体とした重度嚥下障害が遷延した.そこで,亜急性期より負荷量に留意した嚥下関連筋の筋力増強訓練を実施した.その結果,過用性筋力低下や筋炎の再燃など有害事象を生じることなく,舌圧および頸部筋力の改善を認め,3 食経口摂取が可能となった.薬剤治療に加え,亜急性期の嚥下関連筋における筋力増強訓練が,四肢体幹の筋力増強訓練と同様に有効である可能性が示唆されたため,若干の文献的考察とともに報告する.