日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
特別養護老人ホームの口腔ケアにおけるアロマキャンディの有用性
小島 三枝山田 譲司奥 敦文浜田 雅美藤田 栞塚原 丘美
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2021 年 25 巻 2 号 p. 120-128

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抄録

 【目的】 誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが必須である.しかし,多くの高齢者施設において,含嗽ができない高齢者や口腔ケアを拒否する高齢者が多いために口腔ケアは困難である.さらに口腔ケアに関わる時間を確保することも難しく,効率のよいケアの方法が望まれている.そこで,当施設において,舌苔除去に効果のあるアロマキャンディが,効率的かつ有効な口腔ケアになるか検証した.

【方法】 特別養護老人ホーム入居者92 名を対象とし,無作為に介入群(46 名)と非介入群(46 名)の2 群に分けた.介入群はアロマキャンディを1 日3 回,食後を目安に摂取し7 日間継続した.摂取後に舌苔付着程度,カンジダ菌数を摂取前と比較した.カンジダ菌はカンジダディテクター(亀水化学工業)を使用し,コロニーの数で5 段階に分類した.非介入群は通常のケアを継続し,1 週間の期間を経てから再評価した.追跡調査として,摂取開始日より1 カ月後に同様の2 項目を検査し,摂取直後と比較した.

【結果】 介入群は非介入群に比べて舌苔付着程度に減少傾向が認められたが,カンジダ菌数では有意な変化は認められなかった.介入群の介入前後で比較すると,舌苔付着程度が有意に減少した.介入群において,カンジダ菌を高値と低値に群分けし,条件別に検証したところ,義歯なし群,副食形態コード3(摂食嚥下リハ学会分類2013)以下群,BMI 低値群(BMI 20 kg/m2 未満)で有意にカンジダ菌数が減少し,どの群も1 カ月後まで低値を維持する傾向にあった.舌苔付着程度は1 カ月後に有意に上昇した.

【結論】 アロマキャンディは義歯を使用していない,あるいは食物残渣が残りにくい食事を摂取しているなどの条件の場合,一定の効果が得られると考えられた.アロマキャンディは,利用者に苦痛を与えず,かつ効率の良い口腔ケアとして高齢者の口腔衛生状態を改善させ,QOL の維持向上につながることが期待できる.

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© 2021 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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