日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
特別用途食品「とろみ調整用食品」の表示許可に関する物性試験方法の信頼性─室間共同試験による妥当性確認
熊井 康人鈴木 一平東泉 裕子近藤 位旨栢下 淳千葉 剛古庄 律竹林 純
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2022 年 26 巻 3 号 p. 190-200

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抄録

【目的】特別用途食品「とろみ調整用食品」は,嚥下困難者に適したとろみ剤として国から許可を受けた食品である.許可に関わる試験では,全国の第三者機関で,とろみ剤の物性が規格基準を満たすか否か評価される.許可試験の公平性を担保するには,試験室間における試験結果の再現性が優れている必要がある.そこで本研究は,試験方法の信頼性を室間共同試験で検討し,許可試験の方法としての妥当性を考察することを目的とした.

【方法】2018 年12 月~2019 年2 月に,検体としてキサンタンガムをベースとした3 種類のとろみ剤を用いて,10 試験室で許可試験に準じた室間共同試験を実施した.各試験室は,2017 年3 月に発出された通知の方法に基づき,各検体の物性を試験した.得られた結果を解析し,試験室間における適否判定の一致や試験結果のばらつきの程度を確認した.

【結果】性能要件(溶解性・分散性)について,試験室間の適否判定に重大な不一致が認められた.また,性能要件(温度安定性)については,今回の検体に関する適否判定は概ね一致したものの,規格基準の幅に対して試験結果のばらつきが大きく,再現性に懸念があることが示唆された.一方,粘度要件および性能要件(経時的安定性,唾液抵抗性)の試験方法については概ね問題ないと考えられた.

【考察】2017 年3 月に発出された通知の試験方法については,性能要件(溶解性・分散性)に関する再現性が低く,試験条件および適否判定を現実に即して緩和することが望ましいと考えられた.また,性能要件(温度安定性)に関する再現性を高めるために,添加濃度を上げる必要があると考えられた.さらに,粘度計で測定する前に追加の撹拌を加え,性能要件における添加濃度を申請者が示した設計値とすることで,許可試験の方法としてより妥当なものとなると考えられた.

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© 2022 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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