日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
介護付有料老人ホーム入所高齢者における食事形態,摂食嚥下障害関連症状および口腔関連QOL に関する検討
吉武 明莉松田 悠平藤井 航秋房 住郎鈴鴨 よしみ西村 瑠美村木 祐孝内藤 真理子
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2022 年 26 巻 3 号 p. 201-207

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抄録

【目的】近年,施設入所高齢者における食支援の重要性が注目されているが,主観的指標をアウトカムとした報告は少ない.本研究は,介護付有料老人ホーム入所高齢者の食事形態と摂食嚥下障害関連症状や口腔関連QOL との関連を横断的に検討することを目的とした.

【方法】北九州市の60 歳以上の介護付有料老人ホーム入所者102 名(男性33 名,女性69 名)を対象に,2016 年に質問票調査を実施した.栄養摂取状態や健康状態については,施設から情報を収集した.食事形態は,食事に調整が不要である者を「調整不要群」,米飯と軟菜を摂食している者を「調整要1 群」,さらに食事の調整が必要な者を「調整要2 群」として分類した.過去1 週間の摂食嚥下障害関連症状の頻度を,5 段階の自己評価により尋ねた.Quality of Life(QOL)は口腔分野のQOL 尺度であるGeneral Oral Health Assessment Index(GOHAI)を用いて評価した.統計解析として,GOHAI スコアが国民標準値未満(53.1 未満)となるオッズ比(OR)を,ロジスティック回帰分析により性や年齢等を調整して算出した.症状項目と摂食状況の分析にはカイ二乗検定を用いた.

【結果】食事の調整不要群,調整要1 群,調整要2 群の割合は,全体の73%,21%,7% であった.国民標準値未満のGOHAI スコアである対象者は全体の44% であった.食事形態とGOHAI スコア間に有意な関連は認められなかった.調整不要群に比べて,調整要群は「よだれがたれる」について「まれに」あるいは「全然ない」と回答する割合が低かった.

【結論】介護付有料老人ホーム入所高齢者において,食事内容の調整が行われている者は流涎の自覚症状を感じる傾向が認められた.食事形態と口腔関連QOL との間には有意な関連は認められなかった.

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© 2022 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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