日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
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高齢者における安静時咽頭面積と喉頭位置の関連
原 豪志西山 耕一郎並木 千鶴奥村 拓真小林 健一郎谷口 裕重
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2023 年 27 巻 2 号 p. 111-116

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抄録

【目的】高齢者において安静時咽頭腔の拡大は嚥下時の咽頭クリアランスに悪影響を及ぼす.本研究の目的は,高齢者を対象として安静時咽頭腔面積と喉頭位置の関連を明らかにすることである.

【対象と方法】嚥下機能低下を主訴とし歯科診療所を受診した患者で,日常生活動作が自立し,常食を摂取している高齢者を対象とした.身長,体重を計測し,Body Mass Index(BMI)算出し,残存歯数,舌圧を計測した.嚥下造影検査の側面像の静止画を使用し,安静時咽頭腔の指標として安静時咽頭面積を計測した.さらに,後鼻棘から舌骨までの距離を舌骨位置,後鼻棘から声帯下点と気管前壁の交点までの距離を喉頭位置と定義した.統計解析は,各変数間において相関分析を行い,安静時咽頭面積を従属変数とした重回帰分析を行った.有意水準は0.05 とした.

【結果】解析を実施したのは75 名(男性43 名,女性32 名)であり,年齢の中央値は78 歳であった.安静時咽頭面積の説明変数として有意であったのは,年齢(β =0.4489, p<0.001),BMI(β =-0.1841, p=0.041),喉頭位置(β =-0.4318, p=0.002)であった.

【結論】体重の減少や喉頭下垂が安静時咽頭腔拡大に寄与し,咽頭クリアランス低下を招く可能性があることが示唆された.

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© 2023 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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