日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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症例報告
ネオナイシン-e 配合口腔ケアジェルを使用した口腔ケアで口腔カンジダ症を抑制できた筋萎縮性側索硬化症の1 例
橋詰 桃代大野 友久野本 亜希子波多野 真智子藤島 一郎
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2023 年 27 巻 2 号 p. 143-149

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抄録

【緒言】要介護者は自力で十分な口腔ケアが行えず,口腔内環境が悪化し口腔カンジダ症となる場合がある.今回,口腔衛生状態不良な筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)患者において,真菌抑制効果があるとされるネオナイシン-e 配合口腔用ジェル(以下,Ne 配合ジェル)による口腔ケア中は口腔カンジダ症を抑制できたので報告する.

【症例】64 歳男性.16 年前よりALS を発症し,電動車椅子で移動していた.口腔内装置作製目的で歯科外来を受診.初診時,口腔衛生状態が不良で口腔粘膜に白色の偽膜形成を認め口腔カンジダ症と診断.糖尿病の既往と抗菌薬の長期投与に加え清掃状態の不良が口腔カンジダ症の原因であると考えた.経口抗真菌薬を6 日間使用し,歯科衛生士による外来での口腔衛生指導を開始した.

【経過】患者は独居のためセルフケアで管理していた.疾患の症状によりブラシの保持は可能だが,細かい動きが困難なため電動歯ブラシを使用していた.初診時のPlaque Control Record(以下,PCR)は58.3% であり,清掃状態が不良であった.口腔カンジダ症に対し抗真菌薬が処方され,白色偽膜は消失した.その状態を維持するため,歯科衛生士によりNe 配合ジェル使用の口腔衛生指導を行った.Ne 配合ジェルを使用し清掃していた期間中は,口腔カンジダ症の再発はなかった.42 日目,106 日目の自己判断でNe 配合ジェルの使用を中断し清掃していた期間に,口腔カンジダ症の再発を認めた.受診7 日目以降から最終受診までPCR は20% 以下で,清掃状態は保たれていた.

【考察】Ne 配合ジェルを使用し口腔ケアを行っていた期間中は,口腔カンジダ症を抑制できていた.歯科衛生士による口腔衛生指導後,清掃状態は維持できていたが,Ne 配合ジェルを使用していなかった期間に口腔カンジダ症が再発した.Ne 配合ジェルを使用した口腔ケアを実施することで,口腔カンジダ症再発予防や抗真菌薬の投与回数の減少につながる可能性があると考えられる.

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© 2023 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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