日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
短報
肺炎患者における入院時低栄養は,退院時の摂食状況に悪影響を及ぼす
小柳 雄一高木 大輔森脇 元希片桐 伯真大野 友久藤島 一郎
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キーワード: 肺炎, 嚥下障害, 低栄養, GLIM, FILS
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2024 年 28 巻 3 号 p. 161-168

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抄録

【緒言】肺炎患者において嚥下障害は死亡率の増加,在院日数の延長に関連する.高齢化が進む本邦ではサルコペニアによる嚥下障害が問題となっており,その原因の一つに低栄養がある.疾患ごとに栄養と嚥下機能の関係をみた報告が増えているが,肺炎患者を対象とした研究は少ない.今回我々は,低栄養の診断ツールとしての有用性が認められている Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)を用い,肺炎患者の入院時低栄養が,退院時点の摂食嚥下状況に及ぼす影響を調査した.

【方法】本研究は後ろ向きコホート研究である. 2018年 4月から 2019年 3月の期間に肺炎と診断され,摂食嚥下リハビリテーションを受けた患者を対象とし,年齢,性別, BMI, Barthel Index(BI),Food Intake LEVEL Scale(FILS),Charlson Comorbidity Index(CCI)を収集した.主要評価項目は FILSで評価された退院時の摂食嚥下状況とした.GLIMで評価された入院時低栄養にもとづき二群比較を行った.その後,退院時 FILSを従属変数とした重回帰分析により,摂食嚥下機能の回復に関連する因子を分析した.

【結果】206名(85[51–103]歳,女性 81名)の対象者の内, 133名(64.6 %)が低栄養と診断された. GLIM低栄養群では,BMIと入院前 FILS, 退院時 FILSが有意に低かった.重回帰分析の結果,入院時低栄養は退院時 FILSに独立して関連する因子であった( β=-0.419, p=0.003).低栄養患者は,非低栄養の場合と比べて,経口摂取を回復できたものの割合が低かった.

【結論】低栄養は肺炎患者の退院時摂食嚥下状況に悪影響を及ぼす因子であった.入院時に低栄養を有する肺炎患者は,早期の栄養介入が必要な可能性がある.

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© 2024 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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