2025 年 29 巻 1 号 p. 11-17
【緒言】表面筋電計は非侵襲的な筋活動の計測器具として広く嚥下運動の解析に用いられているが,異なる試料を嚥下した時の部位別の筋活動については明らかとなっていない.そこで本研究では異なる試料を嚥下した時の舌骨上筋群の筋活動の変化を明らかにするために,7 つの小型電極を顎下部に設置し,異なる試料を嚥下した時の部位別の筋活動の変化について検討を行った.
【対象と方法】対象は健常成人66 名(平均37.3±13.9 歳)とした.顎下部に7 チャンネル(Channel:CH)の表面筋電計の電極を貼付し,唾液嚥下時,水5 mL 嚥下時,カプセル嚥下時の筋活動を記録した.分析項目は嚥下運動時の筋活動時間(ms),振幅の最大値(mV)と筋電図積分値(mV・ms)とした.統計解析は JMPpro16.0 を使用し,嚥下試料による筋活動の差について一元配置分析を行ったのち,t 検定を用いた.ボンフェローニの補正を行い,有意水準は0.017% 未満とした.
【結果】筋活動時間では全CHにおいて試料による有意差を認めなかった.振幅の最大値では中央部から後方部のCH で,水より唾液,水よりカプセルが有意に大きい値を認めた.筋電図積分値では右側前方部,中央部から後方部のCH において水より唾液,唾液よりカプセル,水よりカプセルで有意に大きい値を認めた.
【結語】本研究の結果より,嚥下時の顎下部の中央部において水分よりも固形物,水分よりも唾液の方が筋収縮力は大きく,要する筋活動量が多いことが示唆された.