日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
口腔の食塊容量に関する感覚と嚥下
宮岡 洋三小池 由紀宮岡 里美
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1999 年 3 巻 1 号 p. 3-9

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抄録

口腔内にある食塊量を知る感覚機構や至適な一回嚥下量を決定する能力は,摂食や嚥下機能を円滑に遂行する上で重要であるにもかかわらず,近年まで研究がなかった.藤島らは,摂食・嚥下障害者や健常者を対象に,これらの能力を調べる検査を初めて導入した。本研究は,藤島らの検査方法を踏まえ,これらの機構や能力への理解を深めることを目的として計画された.健常な女子学生36人を実験対象とした.被験者には,先ず基準量として10.0mlと20.0mlの水を口腔に含ませ,それらの量を記憶させた.その後,被験者に基準量と推定される水を口腔で採らせた.その結果,10.0ml基準量では10.6±0.86ml(平均値±SD,5試行)となり,20.0 mlでは20.2±1.45mlとなった.また,10.0mlを基準量とする実験では,採水量と試行間の変動との間にr=0.540という統計的に有意な正相関(p<0.01)がみられたが,20.0mlの実験ではみられなかった.至適一回嚥下量を決定する実験では,被験者に米菓(長径が約21mm,短径が約7mm,厚さが約4 mmで三日月形)の粒数を順次増やさせ,各自の嚥下に最も適した数を決めさせた.その結果,平均で4.4粒(およそ1.1g)という値がえられた.また,至適一回嚥下量の米菓を1~2分の間隔をあけて3回食べさせ,主観的嚥下容易度/困難度の変化を調べたところ,嚥下容易度/困難度はほとんど変わらずに安定していた.さらに,身体サイズと至適一回嚥下量との関係を調べたところ,身長と至適一回嚥下量との間には弱い正相関(r=0.402,p<0.05)がみられたが,体重やBMI(Body Mass Index)との間には相関がなかった.以上の結果から,健常者が口腔内にある食塊量を知る高い能力をもつことがわかった.また,固形物における至適一回嚥下量を決める上での要因について考察した.

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© 1999 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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