2000 年 4 巻 2 号 p. 47-54
発達期障害者の摂食状況と介助者の摂食に対する意識調査との関連を知る目的で,22施設に入所または通所する利用者100名と在宅者17名について,施設職員,家族などにアンケートを行った.調査内容は,障害分類,粗大運動程度,食環境,摂食機能,回答者の意識などである.これらの調査より以下の結果が得られた.
1)全身状態が安定しており,粗大運動が良好で,姿勢の保持が可能な者が多かった.これは,今回の調査が発達期障害者の中で通常の歯科治療が困難な,全身麻酔下歯科治療経験者を対象としていたことが関係すると考えられた.
2)食物形態は,常食をスプーンで食べる者が半数,次いできざみ食が多かった.きざみ食は大きさの対応で,必ずしも処理しやすいとは言えない.「咀嚼が十分可能」が19%,「口腔内貯留」31%,「摂食中のむせ」が約半数にみられたことからも形態改善の必要性が示唆された.
3)何らかの食事介助を必要とする者が約半数みられた.入所施設での食事介助は,施設職員の拘束時間が長く,負担も大きいと言える.しかし,「下手だが心配していない」と回答したものが約半数を占め,重度障害者の摂食に関する認識は高いとは言えなかった.また,19%が「食べ方に不安がある」と回答し,その内容は誤嚥と関連する内容の他,「舌の上に食べ物を入れにくい」といった誤った介助方法もみられ,改善が望まれた.
4)今回の結果から機能に適していない食物形態や摂食姿勢,誤った介助方法が確認され,摂食状況が良好でないのにも関わらず,介助者の摂食に関する意識は十分とは言えなかった.今後これをふまえ,危険や苦痛のない,安全で楽しい食事時間の確保のために,施設職員や家族への摂食機能の正しい理解,知識向上を図るとともに患者指導を働きかける必要性が示唆された.