口腔の器質的・機能的状態と食形態との関連を明らかにし,適正な食形態決定の指標を確立することを目的として,県内某老人保健施設の入所者69名を対象に,歯科医師・歯科衛生士が口腔内診査,嚥下機能検査,摂食場面の評価を行った.その結果,以下の知見を得た.
1)主食,副菜のどちらにおいても,食形態が普通食からペースト食になるに従い,安定した顎位のとれない者の割合が多くなるのが見受けられた.
2)主食とRSSTとの関連に:おいて,常食摂取者26名中11名(42.3%),全粥摂取者17名中12名(70.6%)は,30秒間の嚥下回数が3回未満であった.両者の間に統計学的有意差は認められないものの,常食の方が3回未満の者が少ない傾向であった.
3)主食,副菜のどちらにおいても,食形態がペースト食に近づくことと,テストフードの残留との間に関連はみられなかった.
以上の結果から,要介護者の食形態選択に際しては,嚥下反射そのものに対する配慮はなされていても,その前段階である,嚥下に至るまでの口腔内の処理に関しては,適正に判断されていなかったものと推察された.
要介護者に対して今回の評価項目を用いることは,適切な食形態の食事を提供するために有効であるものと考えられた.