日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
食塊量の増減に伴う嚥下感覚の変化―お茶を用いた実験
宮岡 里美宮岡 洋三山田 好秋
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2001 年 5 巻 1 号 p. 25-31

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抄録

嚥下機能の感覚的側面に対する理解は,その運動的側面に比較して未だ不十分である.とりわけ,感覚評価の対象となる意識レベルの現象については,これまで実験的研究は少ない.本研究では,健常者に「飲み易さの程度」を評価させる手法を用いて,食塊量と嚥下感覚の関係を調べた.実験材料として室温のお茶を用いた.2種の実験によって,1)一回で最も容易に飲み込める量(至適一回嚥下量,OVS),2)一回で飲み込める最大の量(最大一回嚥下量,MVS),そして3)OVSからの増減が飲み易さ(嚥下容易度,SES)へ与える影響について調べた.実験に参加した被験者は,20歳前後の健康な女子学生67人であり,実験Ⅰ(n=28)と実験ll(n=39)の2群に分けられた.実験Ⅰでは,自由摂取によってOVSとMVSを求めたところ,それぞれ17.9±1.58mL(平均値±SEM)と35.4±2.26mLとなった.また,各被験者のOVS(標準刺激;SS)から2mL刻みで7段階(- 6mL~+6mL)の増減をおこない,マグニチュード推定法によってSESの変化を評価させた.その結果, SESは一回嚥下量の減量と増量によって共に減少し,上限量の(OVS+6)rnL刺激時にはSS刺激時と比べて有意な減少を示した.実験Ⅱでは,全被験者に18mLをSSとして適用し,3mL刻みで7段階(6mL~24mL)の増減をおこない,それに伴うSESの変化を評価させた.その結果,実験Ⅰと同様に,SESは一回嚥下量の減量と増量によって共に減少し,下限量の6mL刺激時と上限量の24mL刺激時にはSS刺激時と比べて有意な減少を示した.本研究の結果は,日常的には知られている「極端に多いあるいは少ない食塊量が嚥下を困難にする」との経験へ実験的な基礎を与えた.

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© 2001 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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