2001 年 5 巻 1 号 p. 20-24
咀嚼障害と食物のテクスチャーの関連を検討するための予備的研究として,咀嚼運動の観点から食物のテクスチャーの測定条件を検討した.被験者は健常成人10名,被験食品は破断特性の異なる5種類とし,それぞれ2種類の大きさとした.その結果,被験食品の大きさと種類によって異なるものの最大閉口速度は102mm/sec~258mm/secの範囲,平均閉口速度は64mm/sec~131mm/secの範囲であった.これらの値は現状のテクスチャー測定機器の圧縮速度よりも10倍以上速いスピードであり,閉口運動速度と食物のテクスチャーの測定条件には,著しい乖離があることが明かとなった.テクスチャー値は測定条件によって異なるため,咀嚼障害と食物のテクスチャーとの関連を検討するためには,咀嚼運動と近似した条件で食物のテクスチャーを測定する必要があると考えられた.