日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
5 巻, 1 号
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 廣瀬 善清, 杢野 謙次, 伊藤 さやか, 有嶋 拓郎, 田中 靖代, 山本 実, 太田 清人, 埜口 義広
    2001 年5 巻1 号 p. 3-10
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2020/07/19
    ジャーナル フリー

    延髄外側部梗塞によるWallenberg症候群17症例を初診時,水飲みテストにより嚥下障害のみられなかったN群,みられたD群に分類した.さらにD群症例は嚥下訓練をおこない,ミキサー食を食べることができるようになるまでの期間でDa群(2週未満),Db群(2~4週),Dc群(4週以上)に分類した.これらN群,D群での臨床症候とMRI画像上の特徴を検討した.

    その結果,以下の知見がえられた.

    1.17症例中,N群は7名,D群は10名(Da群6名,Db群3名,Dc群1名)であり,59%の症例で嚥下障害が出現した.

    2.めまいあるいは浮遊感,眼振,小脳失調,解離性感覚障害は全17症例でみられた.ホルネル症候群,嗄声,吃逆はいずれもD群で出現頻度が高く,特に嗄声は統計学的にも有意に出現頻度が高かった.また,検討した全症候が出現した症例はN群で1例のみ(14%)であったのに対し,D群では7例(70%)であった.

    3.解離性感覚障害の部位,範囲を検討してみると,早川Ⅰ型はN群では7例中3例,D群では10例中7例,早川Ⅱ型はD群で2例みられた.梗塞巣のより限局した早川IV型はN群では4例あり,このうち3例は体幹の感覚が一部正常な症例であった.一方,D群ではIV型は1例のみであった.

    4.MRI所見から梗塞部位を延髄の上中下部に分けてみると,N群では下部が4例,中部が3例であり, D群では上部,中部が5例ずつみられた.

     以上の結果より,症候が出そろったものでは嚥下障害をきたす可能性が高く,その中でも臨床症候としては嗄声が最も重要と考えられ,画像上,延髄上部梗塞では,嚥下障害の出現は必発であった.

  • 関根 紀夫, 伊藤 彰義
    2001 年5 巻1 号 p. 11-19
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2020/07/19
    ジャーナル フリー

    本論文では,パーソナルコンピュータに入力した低コントラストなVF(videofluorography)画像における造影剤の抽出方法について検討を行った.

    VF画像を構成する画素は,画像全体や部位ごとのヒストグラムより,口腔相では低輝度領域に,咽頭相では中輝度領域に分布していた.そこで,対象領域ごとにダイナミックレンジ拡大を施すアルゴリズムを考案した.下顎骨と咽頭に跨がったバリウムは,一括で処理すると不鮮明となり,この場合,背景で分割して処理することにより,両領域で明瞭に抽出された.よって,画像処理プログラムは,口腔・咽頭・食道の3箇所に区分けして施行することにより,診断に有用との結果を得た.

    さらに本手法を用いた新しい撮影システムは,従来法より被曝線量を約45%低減可能と示唆された.

  • 道脇 幸博, 衣松 令恵, 横山 美加, 道 健一, 角 保徳, 大越 ひろ, 高橋 智子
    2001 年5 巻1 号 p. 20-24
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2020/07/19
    ジャーナル フリー

    咀嚼障害と食物のテクスチャーの関連を検討するための予備的研究として,咀嚼運動の観点から食物のテクスチャーの測定条件を検討した.被験者は健常成人10名,被験食品は破断特性の異なる5種類とし,それぞれ2種類の大きさとした.その結果,被験食品の大きさと種類によって異なるものの最大閉口速度は102mm/sec~258mm/secの範囲,平均閉口速度は64mm/sec~131mm/secの範囲であった.これらの値は現状のテクスチャー測定機器の圧縮速度よりも10倍以上速いスピードであり,閉口運動速度と食物のテクスチャーの測定条件には,著しい乖離があることが明かとなった.テクスチャー値は測定条件によって異なるため,咀嚼障害と食物のテクスチャーとの関連を検討するためには,咀嚼運動と近似した条件で食物のテクスチャーを測定する必要があると考えられた.

  • 宮岡 里美, 宮岡 洋三, 山田 好秋
    2001 年5 巻1 号 p. 25-31
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2020/07/19
    ジャーナル フリー

    嚥下機能の感覚的側面に対する理解は,その運動的側面に比較して未だ不十分である.とりわけ,感覚評価の対象となる意識レベルの現象については,これまで実験的研究は少ない.本研究では,健常者に「飲み易さの程度」を評価させる手法を用いて,食塊量と嚥下感覚の関係を調べた.実験材料として室温のお茶を用いた.2種の実験によって,1)一回で最も容易に飲み込める量(至適一回嚥下量,OVS),2)一回で飲み込める最大の量(最大一回嚥下量,MVS),そして3)OVSからの増減が飲み易さ(嚥下容易度,SES)へ与える影響について調べた.実験に参加した被験者は,20歳前後の健康な女子学生67人であり,実験Ⅰ(n=28)と実験ll(n=39)の2群に分けられた.実験Ⅰでは,自由摂取によってOVSとMVSを求めたところ,それぞれ17.9±1.58mL(平均値±SEM)と35.4±2.26mLとなった.また,各被験者のOVS(標準刺激;SS)から2mL刻みで7段階(- 6mL~+6mL)の増減をおこない,マグニチュード推定法によってSESの変化を評価させた.その結果, SESは一回嚥下量の減量と増量によって共に減少し,上限量の(OVS+6)rnL刺激時にはSS刺激時と比べて有意な減少を示した.実験Ⅱでは,全被験者に18mLをSSとして適用し,3mL刻みで7段階(6mL~24mL)の増減をおこない,それに伴うSESの変化を評価させた.その結果,実験Ⅰと同様に,SESは一回嚥下量の減量と増量によって共に減少し,下限量の6mL刺激時と上限量の24mL刺激時にはSS刺激時と比べて有意な減少を示した.本研究の結果は,日常的には知られている「極端に多いあるいは少ない食塊量が嚥下を困難にする」との経験へ実験的な基礎を与えた.

  • ―継続観察による発達変化の検討―
    西方 浩一, 田村 文誉, 向井 美惠
    2001 年5 巻1 号 p. 32-42
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2020/07/19
    ジャーナル フリー

    本研究は,経口摂取準備期からの乳児期の目・手・口の協調運動の発達過程を明らかにする目的で,健康な乳児2名(女児2名)を対象に,被験玩具(棒大・小の木製玩具,立方体小のプラスティック玩具,立方体中・大の木製玩具)をしゃぶる様子をA児は出生後2か月から11か月まで,B児は出生後4か月から11か月までの間,約2週間から4週間ごとにデジタルビデオカメラにて撮影した.各被亡児の動作について,1)被験玩具のつかみ方,2)把握様式,3)視線の変化,4)被験玩具の入り方,5)頸部の代償運動,6)口腔の動き,について観察評価したところ,以下の結論を得た.

    1)リーチ機能の発達する前段階から手と口の協調運動が,また5,6か月頃より視覚的誘導のもと,手と口の協調運動が開始されることがうかがえた.自食準備期としての玩具しゃぶりは,離乳開始以前より始まり,離乳の後期頃には行われなくなる可能性が示唆された.

    2)リーチ,把握機能が未熟な乳児期の児に対して,玩具の把握形態は,立方体に比べ,棒状の形態のものの方が早期より把持が可能となり,その結果口腔へ運び込まれる可能性も高くなるのではないかと推察された.

臨床報告
  • 浅田 美江, 鎌倉 やよい, 藤本 保志, 深田 順子, 野田 順子
    2001 年5 巻1 号 p. 43-48
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2020/07/19
    ジャーナル フリー

    中咽頭癌で手術を受けた患者では,重度の嚥下障害を生じることが少なくない.早期にリハビリテーションを開始するためには,術後急性期から嚥下障害を視野に入れ,合併症予防を重視した看護を行うことが必要である.しかしこれまで,そのための具体的な援助方法は十分には示されてきていない.今回我々は,中咽頭癌術後急性期における看護上の問題と援助方法を明らかにすることを目的に,3症例の検討を行った.3症例はいずれも中咽頭癌の診断によって,中咽頭切除術と遊離皮弁による再建術,患側の頸部郭清術,気管切開術が施行された.

    まず,術式から予測される解剖学的欠損とそれに伴う機能的変化をアセスメントし,術後の問題を明確にした上で看護計画を作成した.3症例に共通した問題は,1)皮弁の血流障害・創傷感染による縫合不全のリスク,2)誤嚥性肺炎のリスクであった.1)に対する援助として,皮弁の血流障害と縫合不全の観察,頸部の安静保持と体位の工夫,口腔ケア,2)に対しては,誤嚥の程度と肺炎症状の観察,口腔ケア,誤嚥を最小限にする体位の工夫,気道のクリアランス向上への援助を計画し,実行した.

    その結果,症例Cは皮弁の栄養静脈閉塞による血流障害を早期に発見することができ,血栓形成部の血管除去術のみで治癒した.症例A,Bは縫合不全を起こすことなく,創治癒に至った.また,症例Aは軽い肺炎症状を起こしたが早期に治癒し,症例B,Cは頻回の痰喀出による不眠を訴えたものの,肺炎には至らなかった.これらの症例から,我々の看護計画は術後急性期の基本的な援助方法として妥当であると考えられた.

  • 木下 憲治, 弘中 祥司, 服部 佳子, 横山 理恵子, 阿部 倫子
    2001 年5 巻1 号 p. 49-56
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2020/07/19
    ジャーナル フリー

    延髄にAstrocytomaを生じ,腫瘍摘出後嚥下障害を生じた小児摂食・嚥下障害患者に対して嚥下造影検査(VF検査と略す)により食形態,嚥下方法,訓練方法を決定した症例を経験した.

    症例:平成4年12月19日生まれ,初診時年齢5歳6か月,女児.1歳4か月で歩行不可,嚥下障害,呼吸障害を生じたため某小児科を受診し,CT・MRI上にて延髄に腫瘍を認めた.1歳4か月時に腫瘍摘出術を施行された.術後,声帯麻痺を生じ気管切開術が行われ,スピーチカニューレの使用により発語は可能になった.粗大運動は独歩可能であった.経口摂取を試みたが誤嚥性肺炎を繰り返したため経口摂取は禁止となった.患児および両親の経口摂取の希望が強いため嚥下機能の精査依頼で,5歳6か月時に,本学歯学部附属病院摂食指導外来に来院し,同日に嚥下造影検査を施行した.

    検査の結果,誤嚥を生じない食形態と嚥下法は,ゼラチンゼリーの顎引き嚥下であった.本症例に知的障害はなく指示に従えるため,直接訓練法としてゼラチンゼリーの顎引き嚥下とsupraglottic swallowを指導した.supraglottic swallowは,直接訓練法として用いたゼラチンゼリーを誤嚥せずに嚥下しているかどうか確認したいと母親が強く希望したためと排痰能力の強化のために行った.実際の訓練指導はVF検査にも同伴した入院先の言語聴覚士が行った.1年後のVF検査での再評価で,ゼラチンゼリーと中粘度のとろみをつけた検査食品に関しては顎引き嚥下を行わずに安全に嚥下することが可能となった.また排痰能力の強化も認められた.造影剤単独,低粘度のとろみのついた検査食品に関しては誤嚥が認められ,基本的な栄養摂取は引き続き経鼻経管栄養に依存しなければならない結果となった.

臨床ヒント
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