日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
嚥下障害の有無からみたWallenberg症候群の臨床的,神経放射線学的検討
廣瀬 善清杢野 謙次伊藤 さやか有嶋 拓郎田中 靖代山本 実太田 清人埜口 義広
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2001 年 5 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

延髄外側部梗塞によるWallenberg症候群17症例を初診時,水飲みテストにより嚥下障害のみられなかったN群,みられたD群に分類した.さらにD群症例は嚥下訓練をおこない,ミキサー食を食べることができるようになるまでの期間でDa群(2週未満),Db群(2~4週),Dc群(4週以上)に分類した.これらN群,D群での臨床症候とMRI画像上の特徴を検討した.

その結果,以下の知見がえられた.

1.17症例中,N群は7名,D群は10名(Da群6名,Db群3名,Dc群1名)であり,59%の症例で嚥下障害が出現した.

2.めまいあるいは浮遊感,眼振,小脳失調,解離性感覚障害は全17症例でみられた.ホルネル症候群,嗄声,吃逆はいずれもD群で出現頻度が高く,特に嗄声は統計学的にも有意に出現頻度が高かった.また,検討した全症候が出現した症例はN群で1例のみ(14%)であったのに対し,D群では7例(70%)であった.

3.解離性感覚障害の部位,範囲を検討してみると,早川Ⅰ型はN群では7例中3例,D群では10例中7例,早川Ⅱ型はD群で2例みられた.梗塞巣のより限局した早川IV型はN群では4例あり,このうち3例は体幹の感覚が一部正常な症例であった.一方,D群ではIV型は1例のみであった.

4.MRI所見から梗塞部位を延髄の上中下部に分けてみると,N群では下部が4例,中部が3例であり, D群では上部,中部が5例ずつみられた.

 以上の結果より,症候が出そろったものでは嚥下障害をきたす可能性が高く,その中でも臨床症候としては嗄声が最も重要と考えられ,画像上,延髄上部梗塞では,嚥下障害の出現は必発であった.

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© 2001 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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