日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
臨床報告
中咽頭癌術後急性期における看護の検討
浅田 美江鎌倉 やよい藤本 保志深田 順子野田 順子
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2001 年 5 巻 1 号 p. 43-48

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抄録

中咽頭癌で手術を受けた患者では,重度の嚥下障害を生じることが少なくない.早期にリハビリテーションを開始するためには,術後急性期から嚥下障害を視野に入れ,合併症予防を重視した看護を行うことが必要である.しかしこれまで,そのための具体的な援助方法は十分には示されてきていない.今回我々は,中咽頭癌術後急性期における看護上の問題と援助方法を明らかにすることを目的に,3症例の検討を行った.3症例はいずれも中咽頭癌の診断によって,中咽頭切除術と遊離皮弁による再建術,患側の頸部郭清術,気管切開術が施行された.

まず,術式から予測される解剖学的欠損とそれに伴う機能的変化をアセスメントし,術後の問題を明確にした上で看護計画を作成した.3症例に共通した問題は,1)皮弁の血流障害・創傷感染による縫合不全のリスク,2)誤嚥性肺炎のリスクであった.1)に対する援助として,皮弁の血流障害と縫合不全の観察,頸部の安静保持と体位の工夫,口腔ケア,2)に対しては,誤嚥の程度と肺炎症状の観察,口腔ケア,誤嚥を最小限にする体位の工夫,気道のクリアランス向上への援助を計画し,実行した.

その結果,症例Cは皮弁の栄養静脈閉塞による血流障害を早期に発見することができ,血栓形成部の血管除去術のみで治癒した.症例A,Bは縫合不全を起こすことなく,創治癒に至った.また,症例Aは軽い肺炎症状を起こしたが早期に治癒し,症例B,Cは頻回の痰喀出による不眠を訴えたものの,肺炎には至らなかった.これらの症例から,我々の看護計画は術後急性期の基本的な援助方法として妥当であると考えられた.

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© 2001 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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