日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
口蓋部舌圧測定による舌運動評価
―口蓋床の厚みが嚥下時舌運動に与える影響―
萬屋 陽田村 文誉向井 美惠
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2002 年 6 巻 2 号 p. 207-217

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抄録

舌接触補助床 (PAP) は嚥下障害を有する患者の舌機能低下を補う上で非常に重要である.この研究は舌機能評価の一助となる方法を確立することと義歯口蓋部の厚みの変化が嚥下時舌運動に及ぼす影響を解明することを目的とした.対象は成人10名(男性10名:平均年齢26.5歳)である.2種類の異なった厚み(1 mmと5 mm)の口蓋床を健康成人男性10名に作製した.圧センサを口蓋床の前方,側方,中央,後方部に埋め込み,被験食品(かぼちゃペースト3g)を嚥下した時の舌圧を測定した.その結果,以下の知見を得た.

1.圧センサ付き口蓋床と超音波エコーのM/Bモードによる同一時間軸における測定システムにより,捕食から嚥下に至るまでの各部位における舌圧値および舌圧発現頂序の精度の高い解析が可能となった.

2.「嚥下時最大舌圧」は,厚みが増すことにより,前方部で小さくなる傾向を示した.後方部では,前方部と逆に大きくなる傾向を示した.

3.「嚥下時舌口蓋接触時間」は,厚みが増すことにより,前方部で短くなる傾向を示した.後方部では,前方部と逆に長くなる傾向を示した.

4.「圧力積」は,口蓋床の厚みが増すことにより,前方部において小さくなる傾向を示した.後方部では,前方部と逆に大きくなる傾向を示した.

5.各センサ部位における「嚥下時舌圧発現順序」は,1 mmの口蓋床において10名中6名,5 mmにおいては7名の者が前方部から舌圧が発現し,すべての者が前方部または側方部から舌圧が発現した.また,厚みに関わらず10名中6名の者は同様の発現順序であった.

6.各センサ部位における「嚥下時最大舌圧発現順序」は,「嚥下時舌圧発現順序」より個人による差が大きく,一定の傾向は認められなかった

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© 2002 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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